ごちゃまぜ
□もし入れ替わったら4
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「エステル、どうした?」
「私…やっぱり不安です。リタは一生懸命元に戻る方法探してくれて、大丈夫と言ってくれました。でも心の中では不安なんです。もし戻れなかったらどうしようとそればかり考えてしまって…」
「エステルはリタの言うこと、信じられねぇのか?」
「そんなことありません!ちゃんと…ちゃんと信じてます!!でもっ…」
「エステル、今は難しいことは考えなくていんだ。ただ戻りたいと思ってればきっと戻れるさ。もし戻れなかったらその時はその時、またみんなで一緒に考えればいい。それにリタの言ったことで失敗したことなんかなかっただろ?だからあまり不安がるな。きっと大丈夫だから」
「ユーリ…そう、ですよね、きっと大丈夫ですよね」
エステルはまだ不安そうな顔をしてるものの、笑顔を見せる。
そんなエステルに俺は優しく笑いかけた。
「あぁ、だから安心して寝たらいい」
「はい!ユーリ、ありがとうございます。それとおやすみなさい」
「おやすみ」
エステルの姿が見えなくなってから俺は自分の…エステルの手を見つめる。
不安なのはエステルだけじゃない。
俺だって…
「俺だって不安だよ…」
「あらら?青年も不安がる時あるのね」
後ろから聞こえてきた明るい声に肩が跳ねた。
振り返ればそこにいたのはおっさんで。
気配、消してやがったな…。
「おっさん、まだ寝てなかったのか?」
「んー?部屋戻る時に青年が嬢ちゃんと話してたから気になってさ」
「盗み聞きしてたのかよ…いい年して恥ずかしくないのかおっさん」
呆れながら言うものの返事は返ってこない。
いつもならふざけたような言葉返してくんのに。
そう思いながら顔を上げた。
するとおっさんはいつもとは違う真剣な顔をして。
「やっぱりユーリも不安?」
「え?」
「さっき不安だって言ってたから」
「別に不安なんかじゃ…」
「ユーリ、エステルの前ではいつも無理するんだな」
「仕方ねぇだろ?俺まで不安だなんて言ったらエステル落ち込ませるだけだし」
そうだ。
俺まで不安だと零せばエステルは益々不安がるだけだ。
だから出来るだけ平常心を保っていた。
誰にも気付かれないように。
なのにこのおっさんは気付いてたのか?
そんなことを考えていると不意に抱きしめられた。
抱きしめてきた相手はもちろんおっさん。
「おっさん!?」
「ユーリ、一人で抱え込まずにもう少し素直になったらどうだ?いつも無理してんの、俺にはバレバレだぞ?」
「………」
どうしておっさんにはバレるんだろう。
他の奴ら…フレンすら気付かない俺の変化にどうして…。
「…っ、」
「およ?泣いてんの?」
「…泣いてねぇよっ!!」
いつもと同じふざけた感じの声が聞こえてくる。
なんか…落ち着く。
おっさんの傍にいると落ち着く自分がいる。
俺はそっとおっさんを抱きしめ返した。
「これからは何かあったら一人で抱え込まずにおっさんに話してね?」
「気が向いたからな」
「うわ、相変わらずきついわねユーリは」
本気でショックを受けてるおっさんに俺は小さな、聞こえるか聞こえないかぐらいの声でありがとうと呟いた。
「ん?なんか言った?」
「なんでもねぇよ。それよりいい加減離せ」
「なによ、自分からも抱きつい…ぐはっ!!」
離す気が全くなさそうなおっさんに頭突きを食らわせてやった。
エステルの身長はおっさんより低いからちょうど当たるんだよな。
「あー、悪いおっさん。頭上げたら丁度…」
「嘘おっしゃい、絶対わざとでしょ!!その棒読みっぷりが証拠!!」
ムスッと頬を膨らませながら言ってくるおっさんはまるで拗ねた子供。
いい年したおっさんがそんな顔しても可愛くないっての。
それでも気持ちが軽くなったのはきっとおっさんのおかげだ。
「おっさん」
「なによ?」
「…俺部屋戻るわ。さっきまでの不安、なくなったから。あ、ありがとな」
今度は聞こえるように言ったけど、面と向かって言うのが恥ずかしくて、顔を背けながら言った。
おっさんを見ればポカンとしていたから俺は逃げるように部屋へと走った。
「全く…いつもあれぐらい素直なら可愛いのに」
俺がいなくなった後、おっさんがそう呟いてたのを俺は知らないでいた。
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