ごちゃまぜ

失敗作は愛の味?
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「………」

「ユーリ、あまり落ち込まないでください」

「べ、別に俺は落ち込んでない」


強がりな言葉を言いながらもユーリの顔は悔しそうな、悲しそうな顔をしていて。
初めて見たその顔を私はつい可愛いと思ってしまいました。
落ち込んでるユーリ、新鮮です。

どうしてユーリが落ち込んでいるのか、それにはちょっとした原因がありまして。
先ほどまでユーリと私はショートケーキを作っていました。
ですが間違いで砂糖ではなく塩を入れてしまったんです。
完成品を食べて気付いた私達は…特にユーリは呆然と立ち尽くしてしまって。
ユーリは今までこんなミスをしたことなかったのに、と悔しそうに顔を歪めていました。
でもどうして間違えちゃったんでしょう…?


「ユーリ、このケーキどうします?まさか失敗するとは思ってなかったので勿体無いですね」

「さすがに俺もこれはちょっと食えねぇわ」

「食べるなんてダメにきまってます!体に悪いですよ」


ユーリの言葉にムッとした私は軽くユーリを睨みました。
そんな私を見たユーリは苦笑いを浮かべながら、悪いと謝ってきたので許してあげました。
分かればいいんです。
せっかく作ったけどこれを食べるのは無理なので捨てるしかないですよね…。


「仕方ないですが、処分しちゃいますね」

「いや、待て」

「どうしたんです?」


お皿を持ち上げようとした瞬間ユーリが止めてきて。
私はお皿を戻し、ユーリを見ました。
すると何やら不適な笑みを浮かべていて。
こういう笑い方をする時のユーリって、よからぬこと考えているんですよね…長いこと一緒にいるのでなんとなく分かります。


「それ、そこに置いてていい」

「ユーリ、いったい…?」

「ん?あぁ、俺は今ちょっと機嫌悪くてな」

「そう、なんです?」


相変わらずユーリは顔に出ないので私には分かりません。
それでも確かに雰囲気がピリピリしてるのは感じてましたが。


「どうせそろそろあいつがくんだろ」

「あいつ?」


ユーリの言葉と同時に部屋の扉をノックする音。
その音を聞いたユーリが、ほらきたと楽しそうに笑いました。
この時間に来る人と言えばあの人のはず…


「フレン!」

「エステリーゼ様、ユーリはいますか?」

「いるから入って来いよ」

「あ、どうぞ、フレン」

「ありがとうございます」


フレンがお辞儀をしてきたため、私もお辞儀をしてふと思い出す。
先ほど言ってた人がフレンのことならまさかとは思いますが…ユーリ…。
私は嫌な予感がして冷や汗が滲み出てきました。


「あれ?これどうしたんだい?」

「あ、それは…」

「俺とエステルで作ったんだ。お前の為に甘さ控えめにしといてやったから。もちろん食うよな?」

「ユーリッ!!」

「エステルは黙ってろ」

「っ…」


止めようと声をかけたものの、そんなこと言われたらもう話しかけれないじゃないですか…。
ユーリが腹が立っているのはよく分かります。
でもそれをフレンにぶつけるのはおかしいと思うんです…いくらなんでも、フレンが可哀想です。


「じゃぁ頂こうかな」


フレンは疑うことなく笑顔で答えていて。
私はいったいどうしたら…。
止めようにもまたユーリにキツく言われたら怖いですし…。


「ほらよ」

「ありがとう。いただきます」

「フレン、だっー…」


だめ!!そういう前にフレンはケーキを口に運んでしまって。
遅かったです…。


「……ふぐっ!!!?」

「フレン、ごめんなさいっ!!」

「エホッ、ゴホッ…エステリーゼ様?」

「私、知ってたのに止めれなくて…」

「こ、これ何入ってるんですか?」

「実は砂糖と塩を間違えてしまって、塩が…」


フレンは噎せながらも聞いてきたので私は申し訳ないながらも教えてあげました。
するとユーリは舌打ちをし、フレンはそんなユーリを睨んでいました。


「ユーリ!!なんでそんなのを僕に!?」

「このまま捨てたらもったいないから」

「もったいないって…僕、死にかけたよ…」

「お前、いつも俺のこと好き好き言ってんじゃん?俺の愛だと思えば全部食えるよな?」

「ちょっ!!ユーリやめっ…!」


ユーリはお皿ごと持ち上げフレンの口の中に無理矢理押し込んでいる。
ユーリ…そんなに食べたかったんですね。
私がちゃんと確認していればこんなことにはならなかったのに…。
フレン、ごめんなさい。
あなたの犠牲をバネに私、次は頑張ります!









(はぁ、スッキリした)

(フレン…)

(大丈夫だって。二、三日すれば目覚めんだろ)

(そうだといいのですが…)


 
 

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