ごちゃまぜ

もし入れ替わったら1
1ページ/4ページ



「……」

「きっ、きゃあああぁ!!」


朝早くから宿屋に響き渡った甲高い女の叫び声。
まだ寝ている人から起きている人までもがあまりの叫び声に肩をビクッとさせた。


「ちょっ、朝早くからなによ………んなっ!?」


「りたぁ…」


エステルの部屋の扉をバンッと開けたリタはエステルを見るなり固まった。
エステルの姿は確かにそこにあった。
けどそこにいるのはいつものエステルじゃなくて。


そこにいたのは…ユーリの姿をしたエステルだった。


「な、なな、なによこれ…!!」


「あれ、ユーリなんでエステルの部屋に?」


リタの声を聞いて飛んできたカロルはエステルではなくユーリがいたことが不思議で仕方なかった。


「カロル、私…」


「私って…、まるでエステルみた……もっ、もしかして…」


ははっと笑っていたカロルの顔がどんどん変わっていく。


「どういうこと!?」


「あら、これはいったいどういうことかしら?」


「青年、していいこととしちゃいけないことがあるでしょ?」


「俺がなんだって?」


ニヤニヤしながら言っていたレイヴンの顔が後ろから聞こえてきた声にピタッと止まった。


「あれ、嬢ちゃん?今ユーリの…」


振り返って見てみればそこにいたのはエステルで。
でも確かに聞こえてきた口調はユーリで。
必死に考えているレイヴンの隣でジュディスがクスッと笑った。


「そういうことなのね」


いち早くこの状況を理解したジュディスにレイヴンはどういうこと?、と問う。


「この二人、中身が入れ替わってるみたい」


ニッコリ微笑んで言うジュディスはどこか楽しそうに見える。


「えっ…、じゃぁ…」


そっとエステルを見る。


「あぁ、俺がユーリ。んであっちはエステルだ」


「……」


しばしの沈黙の間、レイヴンの叫び声がその場に響いた。



-----------------


それから暫くして落ち着いたメンバー全員は話し合いをすることになったものの…
向かい合ったまま誰も何も喋らない。


「あのさ」


そんな中口を開いたのはユーリだった。


「こうやって向かい合ったまま座ってても仕方ねぇから戻る方法探そうぜ?」


ユーリはエステルの姿をしていても中身はいつものユーリのままだった。


「あんたねぇ、エステルの姿なのにその口調は気持ち悪い」


リタは嫌そうな顔をしてユーリを見る。


「仕方ねぇだろ?俺だって好きでこんな姿に……」


ユーリはそこまで言いかけて口を閉じた。
理由はエステルが涙目でユーリを見ていたから。


「ユーリ…」


「あー、わりぃ。別に悪気があって言った「そうですよね、私の姿なんか嫌ですよね…そう、ですよね…ひぇっ…」」


エステルは余程ショックだったのだろうか。
遂に泣き出してしまった。


「あーぁ、青年が泣かした」


「だから悪気があったんじゃ…」


「でも嫌なのよね?」


レイヴンが嫌みを言ってきたかと思えばそこにジュディスまで加わってきてユーリはため息をついた。


俺が悪いんじゃねぇのに…。
チラリとエステルを見ればカロルが頭を撫でて慰めている。
そのおかげかエステルは落ち着きを取り戻していた。


「エステル、悪かったな」


「いえ、私こそユーリの姿で泣いてしまってすいません」


泣き顔のままニッコリ微笑んたエステルにユーリ以外ドキンとした。


「ゆ、ゆ…」


「ん?どうした、カロル」


顔が赤いカロルを不思議に思ったが周りを見ればカロルだけじゃなくリタやジュディスまでもが赤い。


なんだ?


「お、おっさんこのままでもいいかも…」


「はぁ?何言ってんだ、おっ……ちょ、おっさん鼻血!」


「おっと…」


「おじさまはい、ティッシュ」


「ありがと、ジュディスちゃん」


いったいいつ用意したのか何事もなかったようにティッシュを渡すジュディス。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ