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「スザクーっ飯食おうぜっ」
リヴァルは普段通りの明るさでスザクに駆け寄った。
「うんっ!」
スザクもいつも以上のテンションで、負けじと応える。
「何だー?今日は朝からやけにゴキゲンじゃん?何かイイコト…あっ、そういや今朝はルルーシュと一緒に登校して来たよな。途中で会えたんだ?ラッキーじゃん!」
「まあねっ」
本当は家出る時から一緒なんだけどっ!
「ルルーシュは人気高いからなぁ…おっスザク、今日の弁当、なんか凝ってるな!すげぇ…うまそう」
リヴァルは調理パンをくわえたまま、チェック柄のランチクロスに包まれていた弁当を覗き込む。
「えへへへへ」
スザクは締まりの無い笑みを零した。
「スザク、これちょうだ…」
「駄目だっ!」
最後まで言わせず鋭く即答する。
「なんでだよー。いつもはくれるじゃん」
「駄目なものは駄目なの」
「ちぇ…」
スザクの目が本気なのを見て、リヴァルは仕方なく諦める。
悪いけどこれはあげられないよ、リヴァル。
…だって、ルルーシュが僕の為に作ってくれたお弁当なんだから…!
「おーいスザクー、また顔が緩んでるぞー…」
リヴァルはつまらなそうに指摘した。
午後の柔らかな陽気に当たりながら、ルルーシュは窓際の席で惚けた様に外を見つめる。
ふわふわして全然授業に集中出来ない…。
…それもそうか。
だって、一時とはいえ、スザクと一緒に、しかも二人っきりで暮らす事になったんだし、落ち着けなくて当たり前…。
うぅ…。
なんかまた照れてきた…っ。
取り敢えず、会長だけには絶対知られないようにしなきゃ…。
何を言われるか分からない。
等と考えながら教室を出た直後だった。
「ルルちゃん?」
「かっ、会長っ!?」
ミレイは既に良くない笑みを浮かべながらルルーシュに歩み寄る。
「ねぇ、何か私に隠してる事無ぁい?」
イキナリ!?
「べっ、別に何も思い当たりませんけど!」
精一杯自然に振る舞う様に心掛ける。
が、ルルーシュの精一杯はミレイに全く意味を為さない。
「へぇ…、今日あなたとスザク君のお弁当のおかず、みーんな一緒みたいだったけど?」
ッ!!?
「…偶然じゃないですか?」
…ていうか何で知ってるんですか…。
「リヴァルとシャーリーに聞いたのよ」
今、心読まれた…っ!?
ミレイのにやりとした笑顔にルルーシュは心底怖じける。
「あのさぁ、スザク君に聞いちゃったんだけど、同棲する事になったんでしょー?」
「ッ!!あのバカ…っ」
「え…?」
ミレイがきょとんとする。
「え…ッ!!?」
…しまった、ハッタリ…っ!
よく考えれば、スザクだってそこまで馬鹿じゃないか…。
ごめん、スザク…。
「あらあらぁ、うふふふふ。…って何泣きそうな顔してんのよ」
「………っ」
何にせよ、会長にバレた事には変わりないんだ…。
「…あーもう分かったわよ!」
ミレイは突然ルルーシュを抱き締めた。
「かっ、会長…っ?」
胸が…っ!!
「このネタではイジらないし、誰にも言わないであげるから。…ったく、あたし、あんたにだけは甘いのよねぇ…」
ミレイは肩をすくめて笑った。
会長の事だから完全な信用は出来ない。
…けど、そう言ってくれただけでも良かったか。
「ありが…」
「あっ、でも、寝込みは襲われないようにしなさいよ!」
「会長ッ!!」
怒って去ってしまったルルーシュに、ミレイは親の様な困った笑みを浮かべて、明るい溜め息を着いた。
「…両思いなのにじれったいわねぇ…」
気付いてないのはあんた達二人だけなのよ…?
キッチンに食欲をそそる匂いが漂う。
今日はこれといった用事も無く、スザクより先に家に着いたルルーシュは夕食の仕度をしていた。
大方は終わったし…、先にお風呂借りようかな…?
スザクがいたら間違いなく緊張するし…。
小さい頃に入って以来の枢木家の浴室だった。
少し懐かしい。
昨日はといえば、ほとんどの事を自宅で済ませてからこちらに移ったので、一緒に暮らし始めてから実質初めての入浴である。
浴槽に入ると、じわっと疲れが癒されていく。
先にお湯使っちゃったけど、…
…あっ、れ。
という事は、このお湯は、後でスザクが使うって事で…、それは突き詰めると私が裸で入ったお湯にスザクがはだ…っ
「わーッ!!!だめだめっ、今の無しッ!!」
思わず声に出して考えを打ち消す。
えーと、えーっとそう、生徒会企画!
また会長が祭りをやるとか何とか…
会長…
『寝込みは襲われないようにしなさいよ!』
スザクはそんな事しないもん!
紳士だもん!!
バカだけど、優しくて、格好良くて…。
…それに、私なんか全然胸無いし…。
両手でぷにっと揉み、溜め息をつく。
会長とまではいかなくても、シャーリーくらいあればなぁ…。
そしたら…
「…ってバカ!!!」
さっきから何考えてるんだ私!!
…こういうの嫌なのに。
絶対会長のせいだ!
会長が変な事ばっかり言うから…。
会長は漫画とかドラマの見過ぎだと思う。
…そういうのだと例えばお風呂から出た瞬間鉢合わせたりするんだろうな。
…あっ、そうだ、こんな馬鹿な事考えてる場合じゃないんだった!
スザクが帰ってくる前に、そろそろ夕食の残り仕度しなきゃ。
と、ドアに慌てて手を掛けた。
「あ……っ」
「え……っ?」
…あぁそうだった。
これは飽く迄同人小説だったんだ!!