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ルルーシュは緊張した面持ちのまま扉の前で立ち止まると、少し息を吸って止めた。

後にささやかな胸に手を添えてぎゅっと指を握る。

止めていた息を静かに吐き出すと、軽く頷いて目の前の扉をノックした。

「スザク、入るよ?」





「…クっ、スザク…っ!」

呼ばれているのを感じて重い瞼を持ち上げると、極近くにルルーシュを捉えた。

あぁ、相変わらずの美…

…ん?

「え……っ!!?」

次の瞬間、スザクははっきりと覚醒した。

どうしてルルーシュが今ここに居る!?

ルルーシュっていったら、家が隣同士で、幼なじみの女の子で、俺の…っ。

「…何、びっくりした目で…」

「だ、だって、何で君、俺の部屋に…っ!?」

「…バカ、まだ寝惚けてるの?昨日から居るじゃない」

「あ……」

そうだった。


俺とルルーシュの家はどちらも父親が単身赴任していて、普段は母親と二人で暮らしている。

そして家が隣同士なのもあって、この母親同士がまた仲が良くって、今回は二人で海外旅行に行ってしまったらしい。

母親同士の突発的な旅行にはもう慣れてしまっていたが、海外、しかも長期とは。

そしてこれもまたベタなのだが、その間ルルーシュを家に置く、っていう…。

母さんは、若い女の子一人じゃ危ないし、俺は一人じゃ生活出来ないだろうから面倒見て貰えとか何とか言ってたけど、本当に、本、当、に、どういうつもりなのか。

『ルルちゃんがお嫁に来てくれたらねぇ…』は母さんの口癖だけど、まさかね。

…まさかだよな。

第一、ルルーシュのお母さんが許す訳無い。

しかし普通親が高校生の男女を二人っきりで一つ屋根の下に住まわせるだろうか。

…いや、あの人達は普通じゃないか…。

お陰で俺は昨夜ルルーシュに夜這いをかけるか否かで相当葛藤しなければならなかった。

まあ、したのは葛藤だけに留まったが。

ルルーシュにそんな事出来る筈が無い。

…というのも、俺とルルーシュの関係は依然、幼なじみのままだからだ。



「スザク…?」

「あ、あぁごめんっ」

完全に飛んでいた。

…ていうか待って、もしかするとこれはヤバい?

だって寝起きの雄の前で女の子がそんな…。

いや、寧ろルルーシュがッ!!

何で君はそんなに無防備なんだ…!

…そういう所とかも凄く可愛いんだけどさ…。

…大好きなんだけど。


…シーツ越しに気付かれたりなどしていないだろうか…。


「もう、早く起きて。あ…っ朝ごはんできた、から……っ」

ルルーシュが、俯いて目線を逸らしながら呟いた。

「えっ、朝ごはんっ!?ルルーシュの手作りっ?」

何となく顔が赤い…?

…可愛いなあ。

「そうっ。だから早く来てっ」

そう言い残すとルルーシュは、腰まである綺麗な黒髪をふわりとなびかせて、パタパタと部屋から出ていった。


朝からルルーシュの手作り…。

幸せだ…。

…なんか俺の奥さんみたい…。

スザクはベッドで一人、ルルーシュが見れば、だらしない!と一喝されるだろう笑みを湛えていた。





ルルーシュはスザクの部屋から出ると、流し台に手をついた。

それから両頬を手の平で包む。

じんわりと熱が伝わってきた。


…すっ、スザクの寝顔…!

スザクの寝起き…!

あいつ、私の手作りか聞き返す時、凄く嬉しそうな顔してた。

…ような気がする。


鼓動が早くなる。

大丈夫、いつも手伝ってるから料理なら自信あるし…。


じゃあこれ…も…。

ルルーシュは縛られているチェック柄の布の端をつん、と引っ張った。


…あぁでも、私これからどうなっちゃうのかな…っ。

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