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「んーっ」
ルルーシュは一つ達成感のある大きな伸びをして、リビングの椅子に腰掛けた。
自宅の、である。
開け放した窓から入ってくる風が心地好く身体を撫でる。
久し振りに自宅の掃除をしに行くと言ったルルーシュにスザクも手伝うと言って聞かなかったが、それはさすがに悪いと思い振り切って来た。
と言っても隣の家からは掃除機の音が聞こえてくるが。
ほんとの事を言えば、わざわざスザクの家で暮らす必要は無かった。
二人とも立派な高校生で、一人で生活出来ない様な子供でも無いのだし、親の言う事など聞かず、一緒に暮らしているふりだけすることだって出来た。
スザクも自炊出来ない訳では無かろうが、料理だけ持って行くことだって出来た。
─スザクで無ければ間違いなくそうしていただろう。
もてなす側の親切なスザクから言い出せないのを知っていて、親の言い付けを言い訳に厄介になっている。
私はズルい。
…ズルいけど、好きなんだもん。
「………」
ルルーシュは睫毛を伏せた。
ふと時の止まったままのカレンダーが目に入り、一応捲りに行く。
「あ……」
もうこんな時期か…。
…そうでした。
俺が衣替えで夏服という事は、ルルーシュもだって事に気付け俺!
ああぁでもそんな扇状的な格好してて大丈夫なの!?
半袖の広い袖口からは何かイロイロ見えちゃいそうだし、白いブラウスは下着が透けて見えるし…っ。
因みに今日はピンクなんですね!?
ルルーシュ、俺は心配だあぁーっ!!
「スザク?どうしたの?微妙な顔して…」
「うん……」
ルルーシュの問いにスザクは曖昧に返す。
「あっ、もしかしてこれ?…似合わない?」
視線を感じたのか、ルルーシュはブラウスを引っ張って見せた。
スザクは驚いて心外だと言わんばかりにぶんぶんと首を振った。
「ううんっ、全然そんな事無いっ、すごく似合ってるよ!!」
「そ、そう…?」
そこまで肯定されるとも思っていなかったルルーシュは反応に困って返す。
「じゃ、そろそろ行こっか、学校」
「うん」
スザクは笑って促したものの、登校中しきりに溜め息を吐いていた。
…スザク…?
「あれっ、雨降ってない?」
「やだーあたし傘無いよー」
お 約 束 ッ!!!
この下校のタイミングで…!
大丈夫かな、ルルーシュ、雨に濡れて透っけ透けなんてそんなエロい事になったら大変だ!!
俺とかが!!
…いや、俺もそうなんだけど、そんなエロいルルーシュを放置してたら危険過ぎる…!!
あぁでもルルーシュってしっかりしてるからきっと大丈夫なんだろうな…。
…ちょっと残念な様な…でも他の人の目に触れる事を考えたら……そんなの絶対駄目だ!
でもルルーシュ、びっくりするような所が天然だったりするしな…。
そこがまた可愛いんだけど。
まあもし万が一傘持ってなければ俺の置き傘貸すし。
…あ、でもルルーシュは優しいから…
『えっ、でもスザクはどうするの?』
『大丈夫だよ、俺は』
『大丈夫じゃないよっ、スザクが風邪ひいちゃう…。…いっしょにはいろ?』
『ルルー
「っきゃーッ!!」
そんなのらめぇーッ!!
「………ス、スザク…?」
リヴァルが何か恐い物でも見るような目で見つめてくる。
「うわっリヴァルいつからそこにッ!?」
正気に戻り顔が赤くなるのを感じた。
「最初からいたじゃん。お前が雨が降りだした途端どっか飛んで行っちゃったんだよ」
「ご…ごめん」
言い返す言葉も無く、素直に謝る。
「最近お前いつもに増しておかしいぞ?どーせまたルルーシュでエロい妄想してたんだろ!」
「なっ、何言って、違ッ!!」
慌てて否定すると、リヴァルがしたり顔になる。
「ははーん、図星か。雨だし透けブラウスとか?なっ、合ってる?スザク」
「うっ、うるさいなっ、…リヴァルも会長で想像してみろよ!」
「………。っきゃーッ!!」
「…無い。何で?」
俺の置き傘が無い。
…あー…どうしようかな。
と、前方にかなりの人数が群がっているのを認めた。
「…ルルー、シュ…?」