ころしやさん

□朝食プレリュード。
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朝、昨日より5分早めにセットした携帯のアラームで起きると、備え付けの簡素なベッドから直ぐ様起き上がる。

同時に夜のうちから用意しておいた隊服に着替えて、不本意ながら普通の帽子より格段に重くてデカイカエルの形を模した帽子を被る。



そしたら…ちょうど聞こえる足音と、ノックも無しに開かれる扉の音。



『カエルー、朝……って、もう起きてんのかよ』


笑顔から残念そうに、朝から器用に表情を変える彼は、至極つまらなそうに小さく舌打ちをした。


「何なんですかー、ベルセンパイ。舌打ちしたいのはこっちですー…毎朝毎朝、必要以上に早く起きなきゃならないこっちの身にもなれ堕王子」

『毎朝起こしにきてやってんだろ?有り難く思えよ』


独特な笑い方にも、偉そうな物言いにも、もう慣れた。



…いつからだったか、上司である彼が朝から部屋に押し掛けてくるのが日常と化していた。


その非日常が日常になった、忘れもしない初日…

朝早く彼は突然やってきたかと思うと、勝手に人のベッドに潜り込んで抱き枕よろしく抱きついてきたのだ。


低血圧で眠たかったがさすがにその状況下で眠れるほど順応性は高くないので、仕方なくベッドを譲ろうとしたらあっちも起きてきて…結局、無理矢理部屋を追い出すまで、居座って着替えも見ようとしていた。その後は無理矢理食堂に連れて行かれて、不味い料理を食べさせられた……


…という忌まわしい記憶を呼び起こしていると、不意にカエルの重さが増した。


振り向くと彼が上から圧をかけているらしく、中々に動きにくい。


「センパーイ、邪魔ですー。早く退かなきゃ、帽子ごとゴミ箱に捨てたいとか本気で思いますー…っていうかやりかねませーん。」


『ゴミ箱とか、こんなデカイカエル入んねーし。』


ぐりぐりと帽子を撫で回しながら笑う彼には、自分もゴミ箱行きという概念はないらしい。
人の話はちゃんと聞きましょうと、幼い頃に教えられなかったに違いない。


『ほら、支度済んでんなら一緒にメシ行こーぜ。』

「何でミーがセンパイと行かなきゃなんないんですかー。」




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