ごちゃまぜ

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時間、というモノはかけがえのないものらしく、その事を歌にしたアーティストが五万といたりするように、私達の共通意識として意識の根底にあるようだ。タイムイズマネーだ、Time is money。そう、時間は元には戻らないのだ。皆は口を揃えて言う、だから大切にしなければならない、私達は今日ぼその一瞬一瞬を精一杯生きなければならないのだ、と。

私も今を一生懸命生きてみよう、と思った。しかしすぐにそれをやめた。誰かに阻止されたわけでも、なにか止む負えない理由が発生したわけでもない。

ただなんとなく、腰を上げるのが面倒なだけだ。


新学期が始まったその日というのは誰もが浮き足立っていて、そわそわと貧乏ゆすりをしていたり、やたらテンション高く大声で久しぶりに会った友達と会話をしていたりする。それに加えて今回は新学年というオプション付きで、つまるところクラス替えがあり、特に女の子は仲がいい子と同じクラスになれるかどうかなあ、だとか、新しいクラスで皆と仲良くできるかなあ、だとか、妙にどきどきしていたりもするのだ。そんな風にして、辺りからはうおおおと意味のわからない男子の雄たけびが響いたり、1人だけ同じクラスになれなかったと号泣する女子を仲良しグループ総出で慰めてあげるという友情物語が繰り広げられている。
私はこれから1年間お世話になる2年B組の教室で、今春新しく編成された新2年B組のクラスを、自分の席に座ってぼんやりと眺めていた。クラス替えに対してあまり関心を持っていなかったが、1年の頃のクラスはあまり好きではなかったので、私はクラス替えに賛成派である(中には反対派もいるようなのでこういう言い方をしておく)。1年の頃のクラスの雰囲気がここに復元されるのでなければ、2−Bの編成メンバーはどうでもよかった。ただ同じ女子バスケットボール部(略して女バス)の子がいないと後々面倒なことになるので、教室全体を見回して、顔見知りがいないかチェックをしていた。するとセーラーではなく学ランを着た顔見知りが、新たに教室へと入ってくるのを発見した。私は驚いた。二宮和也だ。二宮は軽くあたりを見回し何人かの男子に手を振った後自分の席を見つけ、背負っていたリュックを机の上に無造作に置き、そこに座った。私はその一連の動作を第三者に細かく説明できるほど、二宮のことを凝視していた。それは私がかなり驚いていて、動揺しているということであった。たとえ表面上では普段と変わらなくとも。
私は暫くの間、二宮のことばかり見ていた。なんで二宮がここにいるんだろう、いや同じ高校に入ったことは知っているし、1年の時駐輪場で自転車に乗っている二宮を何度も見かけている。つーか別に二宮がここにいることになんの疑問も無いはずだろ!母親同士は今だ仲がいいから、定期的に二宮の情報は私の耳に入ってくるわけだし!10年前生き別れた兄妹とある日突然同じクラスになったわけじゃないんだから!おい私!何驚いている!何動揺している!
同じ女バスの子にお!同じクラスじゃん!と話しかけられるまで、そのような考えが頭の中を堂々巡りしていた。ぐるぐるぐるぐる。昔の二宮と今の二宮がお互いを追いかけるようにして頭の中を駆け回っている感じだ。その余韻を若干残しつつ、私はその子と今日のメニューはランニングらしいよ、げーまじでか、などと他愛も無い会話をしていたら、新しい担任が教室に入ってきて、HRはじめるぞーと間伸びた声で注目を集めた。

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