ファンタジスタ

□金魂
3ページ/4ページ

「おーいヤブ医者ー元気かー」


ヤブ医者、と呼ばれたその男は机の上にある資料から目を離し、此方を向いた。


「ヤブ医者じゃない、桂だ」


漆黒の黒に包まれた長い髪のその男は冷静に言葉を返す。
後ろの方にはあの白くてデカイ、いつぞやかのお化けのキャラクターのような物体がカルテを片手に持っている。

怪しい。怪しすぎる。

もともと闇医者と言うのは怪しいものだと知っているが、コレはあまりにも怪しすぎる。(特に白いやつが)
今までであったことのない怪しさに私は少し後ずさりながら、金髪の方を睨んだ。


「ところで金時、その娘はなんだ」

「あぁ、コイツ診てやってくんね?此処の近くに金貸しのビルがあんだろ。そこの路地裏で拾ってきた」

「犬猫じゃあるまい。拾ってきたなどと言うな」

「いーから、今日は少しは金あんだ。早く診ろ」

「オイ待て」


勝手に進められていく話に終止符を打つために、話に割って入った。
金髪も長髪も言葉を止めて、私に視線を集める。


「診なくていいよ。私、アンタに世話になる理由もないし、義理もない。別に体もなんともないしね」

「何言ってんだ」

そう言って金髪は向きを変えようとする私の肩をガッと掴む。
ダイレクトに肩を掴まれた為に全身に激痛が走る。「いっ…」と声を出しかけたが、怪我を悟られないように飲み込んだ。
金髪は私を見て厭らしく口端を上げる。


「オメー死にかけてただろ。そんなこと言えた口か。それに…」


肩に置かれた手が力を増した。
私は耐え切れない激痛に顔を歪ませる。


「この肩、痛ェんだろ?」


コイツ、最初から知ってて…!
何か反論しようとも、口からはうめき声にも似た単発な言葉しか出てこない。
段々と涙で溜まってくる目はぼやけていたが、確かに金髪は笑っているように見える。
コイツには逆らえない、と判断する脳に首を振って反論するが、増すばかりの痛みには勝てなく喉は素直に反応した。


「う…ぁ…」

「その辺にしておけ金時。怪我が悪化するだろう」


それを止めたのは長髪だった。金髪はへーいと間の抜けた声を出すと肩から手を離なす。
やっと痛みから解放された肩を労わりながら、私はしぶしぶと前に置かれた丸椅子に腰を下ろした。

「そーそー最初から素直にしてればいいの」

さっきまで激痛を与えられていた手をポンポンと頭に乗せる。
畜生…!と思いながらも、私は素直に診察を受けた。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ