ファンタジスタ

□金魂
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次に目が醒めたのはソファーの上だった。
状況としては2つ考えられる。



1、金髪はホスト。よって此処はホストクラブのソファー。
2、金髪は追っ手。よって此処は事務所のソファー、または私が使っていた個室のソファー。



2の場合は非常にまずい。折角死に物狂いで逃げてきたんだ。連れ戻されたとすれば、パーもいいとこだ。
それ以前に命が無事であるかも定かではない。まだ殺されてないところを見ると、私に洗いざらい吐かせた後、嬲り殺すのだろう。きっと。
それは非常にまずい。


かといって1の場合でも困る。
私は金を持ってないのだ。持っているものといえばケータイとポケットの中に入ったコンタクトの入れ物だけだ。
パソコンは大破させてきたし、もともと口座なんてものは持っていない。
私の所持金はほぼ0に等しいわけだ。
とゆうか勝手に連れてこられたんだ。説明すれば何とかなるかもしれない。



ぼんやりとする意識の中、状況が1であることを切に願った。





しかし今私が置かれている状況は1でも2でも、はたまた3でもなかった。











「おー目ェ醒めたか」


とりあえず体を起こしてみると、隣にはあの金髪が座っていた。
今だグラグラする頭を軽く叩きながら辺りを見回すと、そこは薄暗いホストクラブではなく、見慣れた事務所でもなく、小汚い壁で覆われた待合室だった。
目の前には小さな窓口があり、「受付」と丁寧に明朝体で書かれたプレートが下げてある。


「此処…何処、」

「ん?びょーいん」

「なっ、びょうっ…!」


言われてみればそのような内装だ。私は半分しか開いてなかった目をカッと開いた。
病院は駄目だ。保険証とか持っていないし、第一足がつく。
そう思ってだるい体を起こし、待合室から出て行こうとすると、金髪に腕を掴まれた。
殴られた肩の方の腕をグイと引っ張られたので、思わず顔を顰める。



「だーいじょうぶ。此処、非合法の闇医者だから」



顔を顰めたまま振り返ると金髪は二ィと笑った。
すると奥の方から「坂田さーん」と書かれたプレートが飛び出した。ドアの向こうから白くてデカイ被り物のような物体が、そのプレートを持っている。



「さー行くぞ」



金髪は私の腕をひっぱり奥の方へと歩いて行った。
無理に引っ張られると痛いので、私は仕方がなくその後をついていく。
診察室と書かれたドアの前に立つと金髪は足でドアを開けた。

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