ファンタジスタ
□金魂
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「おーいヤブ医者ー元気かー」
ヤブ医者、と呼ばれたその男は机の上にある資料から目を離し、此方を向いた。
「ヤブ医者じゃない、桂だ」
漆黒の黒に包まれた長い髪のその男は冷静に言葉を返す。
後ろの方にはあの白くてデカイ、いつぞやかのお化けのキャラクターのような物体がカルテを片手に持っている。
怪しい。怪しすぎる。
もともと闇医者と言うのは怪しいものだと知っているが、コレはあまりにも怪しすぎる。(特に白いやつが)
今までであったことのない怪しさに私は少し後ずさりながら、金髪の方を睨んだ。
「ところで金時、その娘はなんだ」
「あぁ、コイツ診てやってくんね?此処の近くに金貸しのビルがあんだろ。そこの路地裏で拾ってきた」
「犬猫じゃあるまい。拾ってきたなどと言うな」
「いーから、今日は少しは金あんだ。早く診ろ」
「オイ待て」
勝手に進められていく話に終止符を打つために、話に割って入った。
金髪も長髪も言葉を止めて、私に視線を集める。
「診なくていいよ。私、アンタに世話になる理由もないし、義理もない。別に体もなんともないしね」
「何言ってんだ」
そう言って金髪は向きを変えようとする私の肩をガッと掴む。
ダイレクトに肩を掴まれた為に全身に激痛が走る。「いっ…」と声を出しかけたが、怪我を悟られないように飲み込んだ。
金髪は私を見て厭らしく口端を上げる。
「オメー死にかけてただろ。そんなこと言えた口か。それに…」
肩に置かれた手が力を増した。
私は耐え切れない激痛に顔を歪ませる。
「この肩、痛ェんだろ?」
コイツ、最初から知ってて…!
何か反論しようとも、口からはうめき声にも似た単発な言葉しか出てこない。
段々と涙で溜まってくる目はぼやけていたが、確かに金髪は笑っているように見える。
コイツには逆らえない、と判断する脳に首を振って反論するが、増すばかりの痛みには勝てなく喉は素直に反応した。
「う…ぁ…」
「その辺にしておけ金時。怪我が悪化するだろう」
それを止めたのは長髪だった。金髪はへーいと間の抜けた声を出すと肩から手を離なす。
やっと痛みから解放された肩を労わりながら、私はしぶしぶと前に置かれた丸椅子に腰を下ろした。
「そーそー最初から素直にしてればいいの」
さっきまで激痛を与えられていた手をポンポンと頭に乗せる。
畜生…!と思いながらも、私は素直に診察を受けた。