ごちゃまぜ

□エバーラスティングライ
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また、ある男の話

俺は掘っている。
ただひたすら掘っている。
シャベルの枝の部分が折れてしまって、かなり持ちにくくなってしまったのだが、スコップ自体はまだまだ健在なので、掘り続けることができる。
しかし掘れども掘れども、夢は一向に出てきやしなかった。
明日は掘り出すことが出来るかもしれない。そう思い続けてもうかなりの歳月がたった。最近では腕やら足やら、体の筋肉が衰え始めて、上手く掘ることが出来なくなってしまった。投げ出してしまいたい。もう何度もそう思ったが、掘るのをやめることは出来ない。俺は必ず夢を掘り出して、高みの見物をしている誰かさんを見返してやらなければならないのだ。
しかしここで俺はふと気がつく。俺の夢とはなんであったのだろう。
俺は掘り出すことばかりに夢中になって、いつのまにか肝心なその掘り出さなければならない理由を忘れてしまっていた。何てことだろう、夢を忘れてしまうだなんて。
俺は掘る手を休めて目を瞑り、マメだらけの掌をその上から覆ってみた。薄ぼんやりと誰かが笑う幸せそうに顔が見える。誰が笑っているのか、ぼやけすぎていてわからなかったが、その人が笑っていると、不思議と俺も幸せになれるような気がした。


俺は掘っている。
ただひたすら、掘り続けている。

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