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それと言うのはまさしくはじめての時と同じ感情で、今まで想像の中でのみ生かされたものが、現実に物質化し、目の前に現れたときの、嬉しさ、そして興奮である。ここまでくれば唯一知能を手に入れた生命体としての高等さなど微塵も無く、他と同じただの『動物』になるのかと、俺は最後、一欠けら残った理性でそう思った。
ベルトできつく縛り上げた、二本の細い腕は、雪のように白く、汚れの無い白河であった。とても綺麗だ。しかし、その美しさは、俺にとっては、かえって住みにくい。先人は言ったものだ、川は濁ったほうがいいと。俺はその腕に口を付け、強く吸い上げる。ほんのりと赤くできた痣を、一つ二つと増やしていく。
これを誰かが見たらなんというだろうか。彼女に跨った俺を無理矢理にも退かすのだろうか。俺は殺させるのだろうか。
もうどうでもよかった。結局俺は目先にある快楽を求め、もっと先にあるものなど見ようとしていなかった。いや見えてはいたが、あえて見ないようにしていた。完全に体が心を侵食し、支配している。もう、止まることが出来ないのだ。
想像よりも大きな胸や、想像よりも悪い感度などが、俺の芯を刺激し、痛く腫れ上がるものの末端からは、欲望の予兆がたれ流れる。ああ、俺は今こんなにも楽しい。平素、身に纏った服の地位や、立場など全て忘れ、平素、脳に廻らせた思想や、観念など全て捨て、この時だけの絶頂感だけを求め、ひたすら腰を振り続けている。全て俺の手の内にある彼女の一挙一動に向けて。

「さ、がる……」

果てる前に、彼女が俺の名前を呼んだのは、はたして現実だったのだろうか。理性をなくした俺にはわからなかった。




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