□16
1ページ/1ページ

体感速度約50kで廊下を走り抜けた俺は、廊下の終末、行き止まりに来たときにスピードを落とすことが出来ず、そのまま勢いよく壁にクラッシュした。そのままの流れで、床にへたりと腰を下ろす。まったく、もう誰もいない放課後でよかった。昼休みにでも同じ事をしてみろ、俺は一気に人気者だ。
つまるところ俺は大変恥ずかしいことをしたわけで、真赤に燃えた耳たぶを両手で押さえた。
(そうだ、そうだ、俺の耳がこんなに熱くなっているのは、今思いっきり走ったからだ)
壁に背中を預けて、制服の前ボタンをあけた。Yシャツの隙間から忍び込んでくる冷たい空気が体に触れ、胸を撫でているのを、俺のしょうもない思考回路は、ありえない妄想と結びつけ、より一層体温を上昇させた。
(ちがう、ちがう)
そしてその妄想が、先ほどのリアルな感覚を蘇らせ、俺は思わず。口を手で覆う。心臓の音は大音声を奏で、もしかしたら廊下中に響き渡り、あの教室まで届いているのかもしれない、そう思うと俺の顔はたこのように赤く炎上した。

(ああ、やべえ)

(すげえ柔らかかった)

最早逃げ場など何処にもなくなってしまった。嗚呼、今夜はとても眠れそうにない。



はじめてのチュウ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ