GIVE&TAKE

□W KING OF FOOL
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午前10時を少し回った頃、喫茶店PHANTOMIMEの出入口には“CLOSE”と彫られた看板が下げられていた。

しかし店内には小太りの中年男性がカウンターに座っている。身形はお世辞にも良いとは言えない。マスターである煉はその男と何やら話している様子である。





「いつも悪いね。」
そう言いながらコーヒーを出す煉。

「こっちも仕事でやってるんだ。気にしないでくれ。」
男は受け取った淹れたてのコーヒーを一口啜り、一服を決め込もうと懐の煙草に手を伸ばした。

ふう、と男が煙を吐くと煙草の匂いと煙ったさが二人の辺りを満たす。





彼は煉から依頼を受け、仕事をしている“業者”だ。人間界在住の吸血鬼へ血を売ることを生業にしている。
“業者”は彼だけでなく、組織的に存在している。

彼は人間だが吸血鬼に精通しており、紅杜にいる吸血鬼とも関わりを持っている。こうして人間の血を仕入れ、煉のような血が入手困難な吸血鬼に雇われたり、紅杜に血を売り渡したりしているのだ。また、仕事柄様々な人間、吸血鬼と通じているので情報も多く持っている。



男は煙草を一本吸い終わるとおもむろに話を切り出した。



「最近ここいらで若い女ばかりが襲われているのを知ってるか?」

「あぁ。」

グラスを念入りに磨きあげながら煉は短く答えた。
地域新聞でここ何日間の間に起きている、連続通り魔事件。煉も嫌がおうにも目にしたことのある記事だった。



「マスコミには口止めか知られちゃいないか分からないが、どうも襲われた女の様子が変らしい。」

二本目の煙草をくわえ、ライターで火を点けながら男は言った。

メディアで報道されていない事件の詳細を煉が知るはずもなく、気になった煉は聞き返す。

「変、と言うと?」

手を止め、男を見やり問う。

男はゆっくりと煙を吐きながら、細く老いた目をさらに細くさせて興味をそそられた煉を焦らすように煙草の灰を灰皿に落とす。
そして口を開いた。















「血が抜かれてたんだとよ。」





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