GIVE&TAKE
□T "Pardon?"
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「…俺、そろっと働こうかと思ってんだ」
今まで口を閉ざしていた息子がカミングアウト。
「いってらっしゃい。私たちの生活の目処が立つまで帰ってきちゃダメよ」
にこやかに、且つ絶対的圧力で母は言った。そして
「人間界の方があなたみたいな人を雇ってくれるわ。気をつけてね」
と押した。
目が言っている。
「稼ぐまで帰ってくるな」と。
ここで言う“あなたみたいな人”とは人間とは比べものにならない程のその美貌のことだ。勿論、身体能力にも優れている彼等を人間が放っておく筈がない。
1週間前から何も食べていないシハヤはもはや食べ物が食える所なら何処でよかった。
吸血鬼は生き血を啜る。一体誰が言ったのだろう。勿論啜るは啜るが、それは人間でいう特上寿司のような物で、滅多に口にできない物である。普段は“業者”が仕入れてスーパーで売るというシステムだ。
即ち、吸血鬼は人と同じように食べ物を食べる。ドリンクが血というだけだ。
「もう行く。じゃあな」
かくして、シハヤは家族との別れなど惜しむこともなく人間界に向かうのだった。