組曲『異端』より
□第１番 『出動』
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今日は８人で初の合奏となる日。
今までの個人練習の成果を出す。
８人が一つの黒いメトロノームを取り囲むように並んでいる。チューバは楽器の大きさと重さ上、座って吹くが、それ以外の７名は立っている。
「１、２、３...」
男子の割には高めの声で数えられたそれに合わせて皆が一斉にブレス(空気を吸い込むこと)をする。
とたんに華々しいトランペットのファンファーレが流れ出す。それを引き立てるように他の楽器がファンファーレに加わる｡
しかし、トランペットの二人がコケた(失敗した)｡
････････････
音が止んだ。
その次には
｢｢ごめん!!｣｣
とハモりで謝る声がした｡同じ赤茶の髪をした、双子のトランペッター、田辺 湊･滉(ﾀﾅﾍﾞｿｳ･ｺｳ)だ。
「同じ所でコケるんだもん。ウケたわ〜」
そう言っておどけて見せるボーイッシュファーストホルン担当の景夜こと西藤 景夜(ｻｲﾄｳｴｲﾔ)。
「景夜も間違ってたよ、音。」
鋭い指摘はセカンドホルンの林田 貴司(ﾊﾔｼﾀﾞﾀｶｼ)。やはりライバル視している景夜のミスは見逃さなかったようだ。
「折角気持よく吹いてたのにさ〜。なぁヒロ〜？」
「私、間違えてしまいました･･･」
バランスを考えず、大音量で吹いてたチャラい(?)セカンドトロンボーン、寺山 啓(ﾃﾗﾔﾏｹｲ)の投げかけに、いっぱいいっぱいの大人しめファーストトロンボーンの金田 緋絽(ｶﾅﾀﾞﾋﾛ)が答える。
「私、まだ入ってすらないよ」
出番が来る前に演奏を中断されたユーフォニアム担当の中原 瑠色(ﾅｶﾊﾗﾙｲ)。練習中はセミロングの黒髪が邪魔なので後で一つにまとめてある。その黒髪から覗く顔は不機嫌そうだ。
「まぁまぁ。曲の入り方が掴めたんだから十分だよ。今日が初めての合奏だし。もう一回やろう」
この収拾のつかない集団をうまくまとめるチューバ担当の成宮 羽月(ﾅﾙﾐﾔﾊﾂﾞｷ)。実質このアンコンメンバーのリーダー的存在だ。
ちなみに事実上のリーダーは、ファーストトランぺットの田辺 湊だ。
入部当時からの付き合いのこの８人。個性の強い今年のメンバー。練習は楽しいものだ。
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