庭球

□観月WD
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「にゅふふふふ…♪」

「…気味の悪い笑い方ですね。
一体何なんですか?さっきから。」

「観月ってば相変わらず失礼ね。
あんたの笑い方のがよっぽど気味悪いわよ。
ねぇ僕達?今日は何の日か知ってるかしら?」

そう言って勢いよくカレンダーを叩く私に皆はポカンとする。



「今日って…3月14日……だーね?」

「カレーの日!!!」

「アンタは一回カレーの海で溺れて来い。」


赤澤のカレー馬鹿回答に私は近くにあったテニスボールを奴の顔面にぶつける。



「あ、俺知ってますよ。
今日ホワイトデーですよね。」

「そうだよ〜さっすが裕太〜!!」

「ぐぇ!!せ…先輩……く、くるし…」


私が聞きたかった答えを容易に出してくれた可愛い裕太に抱き着いてよしよしと頭を撫でる。



「で、そのホワイトデーが何だと言うのですか?」


なんて野暮な事を聞く観月。
ホワイトデーと言ったらそんなの決まってるでしょ。
私は何も言わず手を差し出した。



「な、何ですか?」

「何ってバレンタインのお返し早く頂戴よ。」





「「「「「えー!!!!!」」」」」


皆は驚愕の顔で、声をハモらせて叫んだ。



「なによ…そんなに驚かなくても。
一月前私、ちゃんと皆にチョコあげたでしょ?」

「いや…そりゃ驚くだろ!!
お前あんなチョコレートと呼べない物体を押し付けてなおお返しを期待していたの…がふぉ!!!!」


失礼な事を口にする赤澤を黙らせるよう、
今度は近くにあったラケットを奴の顔面に投げつけた。
流石にタフな赤澤でもラケットはキツかったようでバタリと床に倒れる。



「皆、思い出しなさい一月前の事を!!
私の愛情の篭ったチョコレートを!!」

「一月前って…葬り去りたい過去しか……ぐわぁっ!!!」


柳沢も赤澤の二の舞にしてやる。



「くすくす…僕、あるよ…?お返し。」

「ホント?流石あっちゃん!!!」

「ちょっと待ってて…」


そう言ってあっちゃんは部室を出て行った。





−−15分後


「あっちゃん遅いねー」

「そうですね……。」





−−30分後


「ふぁあ〜……。」

「戻って来ませんね。」





−−1時間後…


「木更津くん…上手く逃げましたね…」

「アイツ明日絶対殺るっ!!!!!」

「せ、先輩!!!落ち着いて下さいー。」


怒りで乱心する私を裕太は全力で抑える。
くそくそあっちゃんめ!!!
覚えてろ!!こんちくしょ!!!



「裕太は?裕太はお返しくれないの…?」

「あ……いや……その、」

「そっか…やっぱりくれないよね…。
あんなチョコレートだもんね……。
でも私……あれでも頑張ったんだけどな。」



涙ぐんだ顔で裕太を見上げてそう言う。
すると裕太は顔を赤くしたかと思うと突然私から離れ鞄を手に取った。
そしてファスナーを開くとそれを真っ逆さまにした。

当然鞄の中身は重力に従って床に落ちる。



あっと言う間に部室の床にチョコレートやらクッキーやらのお菓子の山ができた。



「はぁ…裕太くん……。
そこは教科書を入れる所ですよ。」



呆れる観月をよそに裕太はハァハァと息を荒げごくりと唾を飲み込み意を決した様に叫んだ。



「こ……これは…ハァ…お、俺の命より大切なお菓子です…。
…これ…好きな物好きなだけ持って行って下さい!!!」

「ありがとう。じゃ、全部で♪」

「な……なああぁぁっっ!!!??」


きっぱりと即答する私に裕太は石像の様に固まった。
用意周到に持って来ていたビニール袋に一つ余す事なく裕太のお菓子を詰め込む。



私が一つまた一つとお菓子を詰める度に裕太のHPは低下して最後のお菓子を詰め込むと同時に裕太は部室の床に倒れた。





「全く…貴女は。…少しは遠慮なさい。」

「だって裕太が好きなだけって言ったから。」


そう言いながら裕太のお菓子と自分の荷物を纏めると立ち上がり扉に向かった。



「儲かった儲かった。じゃあね。」

「お待ちなさい。」

「ん?何、観月。」



扉のノブに手をかけようと思った所突然観月に呼び止められた。



「僕には…」

「え?」

「僕にはお返しの事聞かないのですか?」


観月のその言葉に私は数回瞬きをした後、にやにやと怪しい笑みを浮かべた。



「なぁーんだー、観月も構って欲しかったんだ。」


私の言葉に観月は「なっ!?」と顔を赤くさせる。


「馬鹿言わないで下さい!!
あまり調子に乗ると怒りますよ。」

「はいはい。いいよどうせ観月に期待なんかしてなかったから。」



「じゃあね。」と再度ノブに右手を伸ばした所「待ちなさいと言ってるでしょう」とまた観月に声をかけられ私の右手は空を掴む。





「あぁもう!!だから何?用があるならハッキリ言ってよ。」



「……………紅茶が飲みたい気分です。」



「は?」


脈絡のないその一言に間抜けな声が出る。
すると観月は咳ばらいを一つし付け足すように言った。





「駅前に出来たカフェに行きましょう。
あそこの紅茶の味は中々よかったので。
……ついでにバレンタインのお返しの意を込めてケーキでもごちそうしますよ。」



思いがけない観月の言葉に顔が自然と綻んだ。



「へへっ。ありがとう、観月っ。」


私達はお互いの手を握って部室を後にした。





「ですからその裕太くんのお菓子。
半分くらいは彼に返してあげるんですよ。」

「えー、それとこれとは話は別。」

「ふぅ……まったく…。」



(ツンデレお母さん観月)



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金田くんも出してあげたかった(涙)





 


 
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