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「…嬉しい。ルルーシュ、僕のことそんなふうに思ってくれてるの?」
「…バカ……っ」
唇が下りてきた。熱い舌が俺の唇を割り開いて入ってくる。
何かを求めるみたいにして、絡め合う。
身体がジンと痺れて力が抜けた。
スザクとキスをするといつも何かふわっとした気持ちになる。
たまらない。
ちゅっ、と濡れた音を立てて離れた舌と舌との間に、透明な糸が引いた。
「スザク…」
身体を預けたまま見上げると、スザクはくすっと笑った。
「可愛いね、ルルーシュ」
「………っ」
こちらが困ってしまうくらい甘い顔でそう言われて、また顔が熱くなるのを感じた。
他の奴に言われたら鳥肌が立つだけだけどな。
スザクが俺を丁寧にベッドに横たえる。
見詰め合っているとスザクはまたくすっと笑って触れるだけのキスをしてきた。
「あっ!あー…そうだ、ごめん。年に一度の誕生日なんだけど、……ルルーシュの分しか買えなかった…」
そう言ってスザクは、荷物と一緒に置いてあった、紙の白い箱を開けた。
苺のショートケーキ。
お前、ケーキ一個って…。まあこいつが安月給なのは百も承知だし、逆に俺のせいで無理をさせるのも忍びないからな。
それに、なんと言っても俺はこいつがこうやって祝おうとしてくれていることが何より嬉しい。
「ありがとう。じゃあ今から一緒に食べよう」
「いいの?」
「そっちの方が美味しいだろ?」
「わーい!じゃ、ルルーシュ、あ〜ん…」
スザクはにこにこしながら俺の顔の前に、艶々と光る真っ赤な苺を差し出してくる、
が…。
「ルルーシュ?」
お前の手から食べろと言うのか…!?
「…く……っ」
恥ずかしさに悶え死にそうになったが、スザクがあまりにも嬉しそうなので、ぎゅっと目を瞑ったまま、苺を摘まむスザクの指にくわえついた。
「か、可愛…っ!!!」
スザクが赤い顔をして胸を押さえている。
何がだ?
口の中に苺の瑞々しい甘酸っぱさが広がった。
「美味しい?」
俺はコクンと頷いた。
「本当?じゃあ僕もいただきま〜す」
「ん……ッ!!?」
いきなりスザクの顔が近づいてきて、再び俺の口内をまさぐり始めた。
こいつ、何をする!
「ん…ん……っふぁあ…っ」
背筋がぞくぞくする。
スザクに散々好き勝手されてから、やっとのことで解放された。
嚥下しきれずに唇の端からこぼれた唾液と、100%の苺果汁もスザクが舐め取る。
「うん、甘い」
満足げに笑うスザク。
「お前……ッ!!」
「ん?」
スザクはしれっとしている。
まさかこいつ、天然じゃなくて確信犯…!!?
「ふふ、じゃあこっちも食べようか」
スザクは生クリームのたっぷりコーティングされたケーキ自体を持ち上げた。
その笑顔…絶対ろくなこと考えてないな…!?
と、スザクは俺のトップスを捲り上げた。
「お、おいっ、何してるんだ!ケーキは…っ」
スザクは付属の透明なフォークで切り分けたケーキを俺の目の前に突き出す。
俺はまた仕方なくフォークをくわえた。
今度は同じことをされまいと手で口を覆っているが、スザクは余裕の笑みを返してきた。
イヤな予感…。