〜深層心理〜
だって我慢出来なかったんだ。
とうに限界は超えていて。
目の前のルルーシュは眼を見開いて固まっている。
まあ、当然の反応だろう。
特にルルーシュはイレギュラーに弱いしね。
でもそんな表情でさえ彫刻の巨匠の、渾身の作品の様に見えてしまうのが、流石君。
あーあ。嫌われちゃったかな。
変な奴って…それはもともと思われてるか。
でも君が悪いんだよ?
自分でも呆れた責任転嫁だとは思うけど、でもやっぱり君だって悪いよ。
僕にそんな無防備でいるから。
みんなと必要以上にベタベタするから。
…だから、僕の中の『俺』が顔なんか出しちゃったんじゃないか。
さて、ルルーシュが何か動きを取ったら、言い訳しなきゃ。
大丈夫、普段の僕なら。
いつもの天然で大方なんとかなる。
どうせ。
…どうせ君の中での僕なんて、ただの友達でしかないんだろうから。
と、ルルーシュの腕が静かに、ゆっくりと動いた。
自ら形の良い唇にそっと触れる。
その柔らかい場所に。
僕が今さっき、僕自身の唇で触れた、その場所に。
あぁでも。
確かに後悔して無い訳じゃ無いけど。
けど、それ以上に何ていうか、幸せ、みたいなものを感じてしまった。
…もう一回したいな。
僕はバカなんだろうか。
…うん、バカだ。ルルーシュにもよくそう言われるし。
「…スザク、……これはどういう…」
来た。
「………っ」
あれ。
天然で誤魔化すつもりだったのにな。
笑顔作って口を開いたのはいいけど、声が出ない。
叫んでる叫んでる。
僕の奧の方で叫んでる。
もう限界だ、って。
嘘は吐けない、って。
伝えてしまいたい、って。
でもそんな事をしたら、今度こそ本当に僕達、友達じゃいられなくなるかな。
自然に君の隣にいることも出来なくなるかな。
…いいやもう。こんな苦しいのは終わりにしよう。
「ルルーシュ……」
ルルーシュと視線が絡み合って、もう何度目か知れない、射ぬかれた様な胸の痛みに襲われる。
「好きだ……」
言ってしまった。
ルルーシュは更に大きく眼を見開くと、顔をぶわあっと真っ赤にした。
あ、やっぱり怒った…のか、な……?
…でも、でもよーく見るとこれは少し……可愛い?
僕が都合良く解釈しているだけだろうか。
ルルーシュの表情が仄かに甘さを含んでいるように見えるなんて。
「ルルーシュ……?」
「スザク……俺は、俺…………も…………………っ」
え……?
ほとんど聞き取れなかったけど、最後に小さく呟かれた言葉は…。
「ルルーシュ、今……何て?」
「にっ、二度も言わせる気かっ!?」
「うん、ごめん、もう一回」
「………っ。……俺も、スザクが……好きだと言ったんだ!」
気が付いたら抱き締めていた。
ルルーシュの顔は真っ赤で。
見たことも無いような表情で。
腕の中のルルーシュは華奢だけど、確かにそこに存在していて。
僕を突き飛ばして拒絶することも無く、受け入れてくれている。
あのルルーシュが!
言い様も無い優越感が僕の中を駆け回る。
僕は身体を少しだけ離して、正面から見つめた。
あれ、ルルーシュってば涙目?
可愛いな。
可愛い。すごく嬉しい。
「可愛い」
「うるさい」
「ねぇ、もう一回キスしていい?」
「……いいから泣くな。……バカ」