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ルルーシュが自室に戻ると、スザクは既に寝間着に着替え終え、ベッドの上に座っていた。
「お帰り」
「あぁ」
ルルーシュも着替え始める。
「僕、ベッド温めておくね」
そう言ってスザクはシーツに潜り込む。
「そういえば日本には湯たんぽという物があるらしいな」
「そうそう。あれ、温かくて気持ち良いんだよね。…じゃあ僕がルルーシュの湯たんぽになってあげるから、好きなだけ抱き締めてねっ!」
笑顔で言いきるスザク。
「何言ってるんだお前…」
ルルーシュのつれない反応にはもう慣れっこだ。
彼が極度のツンデレであるのは、今に始まったことでは無い。
と、諦めながらもスザクが少々落ち込んでいる時だった。
「そうだスザク」
ルルーシュがベッドに腰掛け、シャツのボタンを留める途中で振り返った。
その微妙なチラリズムにスザクの視線は釘付けだ。
「ん?何?」
「『姫はじめ』しないか?」
「…………………………は?」
スザクの首がぎこちなく上に向く。
ルルーシュは至って平然としていた。
「だから『姫はじめ』を…」
「分かった。今すぐしよう」
「え、今から?今からできるのか?ところでその『姫はじめ』ってな…」
ルルーシュは腕を強く引っ張られバランスを崩し、ベッドに倒れ込んだところでスザクの唇が降りてきた。
いきなりのことで呆気に取られるルルーシュに、スザクはキスをどんどん深くする。
既におやすみのキス等というレベルでは無い。
スザクの唇が離れていった時にはもうルルーシュは頬を上気させ、瞳を潤ませていた。
「いっ、いきなり何するんだ…っ!姫はじめするんじゃなかったのかっ!?」
「だから今しようとしてるんじゃないか」
「…は…っ??」
スザクはルルーシュの無垢な瞳を数秒見つめた後、ため息をついた。
「…おかしいとは思ったんだ。君からそんな事言い出すなんて…。……でももう遅いからね、ルルーシュ」
「ス、スザク…?」
スザクは訳の分かっていないルルーシュの首筋に吸い付いた。
「んぁ……っ」
「ルルーシュ、姫はじめなんて言葉誰から聞いたの」
頬や耳にも軽いキスを落としていく。
「ナナリーだ。正月の行事だって…」
仲の良い二人の間で行われる、と。
「ナナリー…!そっか…」
それでこの兄もそれが何なのか良く分からないまま言ってみた様だ。
「あのね、ルルーシュ。姫はじめっていうのはね、年が明けてから初めて夫婦が営む事を言うんだよ?」
「な……っ!!?」
信じられなくてスザクを見たが、彼の表情に嘘は無い。
ルルーシュはこの時初めて自分がどういうことをしていたのかを理解し、顔を一気に紅潮させた。
「可愛いかったよ?姫はじめをねだるルルーシュ」
スザクがニヤリと笑顔を向けてくる。
「………っ!!」
ルルーシュは腕で真っ赤になった顔を覆った。
「そんなに恥ずかしがらないで。……まあ、やめてあげるつもりは無いけど」
スザクはルルーシュの鎖骨にキスをした。
「………バカっ」