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〜あけまして〜
「よし、完璧だ」
ルルーシュは作り終えた煮物の汁を啜るなり、会心の笑みを浮かべた。
咲世子にナナリーの世話を任せている為、現在キッチンに立っているのは、彼一人だ。
「うわあ、美味しそう」
入って来たスザクも、テーブルの上に並べられたおせち料理の数々を見ると、感嘆の声を上げた。
今年ランペルージ兄妹は、独り暮らしのスザクをクラブハウスでの年越しに招いた。
「当然だ」
振り向き様、そうは言いながらも、ルルーシュは嬉しそうに応える。
「流石だね。お疲れ様」
スザクがルルーシュの両肩に手を置く。
ルルーシュはスザクにばれない様にこっそりと笑みを零した。
それからナナリーや咲世子と共にカウントダウンで盛り上がり、そろそろお開きにすることになった。
「では、おやすみなさい。お兄様、スザクさん。今日はとても楽しかったです」
「あぁ。おやすみナナリー」
「おやすみっ」
ルルーシュは妹の額にキスし、スザクは頭を撫でた。
「そういえばお兄様」
スザクが手洗いに行くのに、少し先に部屋を去った時だった。
「なんだい?ナナリー」
「日本にはお正月の伝統行事で、姫はじめというものがあるそうですよ」
「姫はじめ?」
知らない単語にルルーシュは首を傾げる。
「はい。なんでも、仲の良いお二人の間での行事だそうです。いかがですか?お兄様もスザクさんをご一緒に誘われては。スザクさんなら姫はじめの行い方もきっと良くご存知でしょうし」
「ふむ、姫はじめか…。分かった、聞いてみよう」
部屋に向かう兄を見送りながら、ナナリーは呟く。
「日本のお正月って、素晴らしい…。ねぇ、咲世子さん」
「えぇ、本当に…」
ずっと後ろで控えていた咲世子が若き女主人の言葉に頷く。
二人は和やかな笑みを交わした。