「黒崎、これ」
「?……なんだ?」
そう首を傾げたある4月の暖かい日。
俺は十番隊隊舎の執務室に居た。
「ここでは開けるなよ」
「は?なんでだよ?」
「いいから」
「……?意味わかんねんだけど」
冬獅郎からもらった白く飾り気のない小さな箱。
それを眺めながら呟くと軽く五月蝿いと一蹴され、俺は部屋を追い出された。
「なんなんだあいつ」
勝手に呼びつけたのはあっちだってのに。
それでも健気に通ってしまう俺はきっと、端から見れば馬鹿な奴なんだろうな、なんて頭の隅で考える。
久しぶりのあいつは相変わらずで、目線すらろくに合わせない。
いつ来ても山積みにされた書類から顔を上げることはなくて、時々だけどそれが少しだけ虚しい。
「お、一護じゃねぇか」
そんなことを1人考えながら歩いていれば、後ろから聞き慣れた声が一つ。
「恋次」
「よぉ、久々だな」
「お前またでかくなってね?」
「一護が縮んだんだろ」
振り返れば予想した通りの相手に、相変わらずのでかい図体。
そんな恋次は屈託なく笑って俺を見下ろした。
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