bleach(一+日)
□初詣の願い事
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この手をいつまで
俺は握り返せるだろうか
*
それは年始を迎えて3日目の朝。
初詣日和に恵まれて、外は快晴、頬を刺すような北風が抜ける空の高い日。
黒崎家2階で騒ぐ者が数人居る。
「だーかーらー、お前なら多分誰もわかんねぇって」
「そ、そういう問題じゃねぇだろうがっ」
「似合う服を着たらいいじゃないですか隊長ぉ〜」
「そーだそーだ、せっかく初詣行くんだぞ」
ぶーぶーと駄々をこねるのは、部下の松本乱菊と、今日一緒に出かける約束をした一護だ。
元はと言えば、松本がどこかから入手した黒い晴れ着が原因なのだ。
「松本!お前が着ればいいだろうが」
「何を言ってんですか隊長ったら!今日は隊長と一護の2人で初詣に行くんでしょ」
黒地に水色や白銀の刺繍糸で彩られた牡丹や蝶の模様は、どうみても女物の着物だ。
それを目の前に広げられ、今日の初詣に着て行けと言うのだ。
これが任務ならば渋々でも嫌々でも着ていたかもしれないが、今日は久しぶりの休暇。
一護の前では尚更、こんな着物は恥ずかしくて着られそうもなかった。
「く、くろさき、早く行かねぇと混むんじゃねぇのか」
「ん?あー……まぁ混むだろうけどー。着物じゃ歩き辛ぇ?」
「あ、ああ!そうだ松本!歩き辛かったら他人様にも迷惑を掛けるからな。仕方ないがその晴れ着はまた今度だ」
「えぇぇー!勿体無い!」
勿体無くない!
そんな必死なツッコミを入れている暇もなく、日番谷は逃げるように部屋を出た。
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