bleach(一+日)
□恋人境界線
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「冬獅郎、脱がすぞ」
雪のように白い肌と、幼さの残る銀髪。
肩から着物を羽織ったまま行為の後倒れ込むように眠ってしまった恋人に、一護は耳元で囁いた。
「……ん」
「おーい、着替えねぇと着物しわくちゃになんぞ」
「んぅー…………」
普段見せることなどまず有り得ない日番谷の寝顔に一瞬ドキッと胸が高まる一護だが、寝込みを襲うわけにもいかず布団の横に腰を下ろした。
「お前他のやつの前で寝るなよ?」
おろされている髪を撫でながら鼻を摘むと、息苦しそうに日番谷は一護の指に触れる。
「細っせぇ指だなぁ」
「ぅんんー……〜〜〜っ」
ぷはっと口で大きく息を吸って無理やりに起こされた日番谷は、ガバッと起き上がる。
眉間に皺を寄せてきょろきょろと辺りを見回せば隣に居た一護に気がついた。
「……くろさき」
「起きたか?」
「、…………今すっげー苦しかった」
「気のせいじゃね?」
寝起きでぼんやりとしている姿を見てくすくす笑う相手に、日番谷は唸る。
「鼻摘んだろ」
「摘んでねーって」
小さな笑いが止まらない一護の髪を反撃するようにぐしゃぐしゃに掻き回すと、日番谷ははだけた死覇装を整えながら抗議した。
「なに笑ってんだ」
「お前がホント可愛いなと思って」
「っはぁぁ?」
熱を集めている顔を隠しそびれた日番谷が大きな声で反論すれば、顎を軽く持ち上げられてしまう。
近すぎる恋人の顔に心臓が口からはみ出るんじゃないかと思えるほどの動悸が襲う。
「あ、頭だいじょぶかお前」
「失礼な。襲うぞ」
「っ……!ばか!離れろッ」
恥ずかしくてどうにかなってしまうんじゃないかと視線を逸らせば、一護の唇が日番谷の呼吸を止める。
「んぅっ!……ふ、ッ」
「寝起きの冬獅郎も可愛い」
「っふ……ん」
弱い力で押し返されることが、なぜこんなにも自分を高ぶらせるのか。
一護は貪るように口腔を犯すと、苦しそうに上気した日番谷の顔にキスを落とした。
「く、くろさき?」
「少し触らせろ」
「……なんだいきなり」
寝起きでぼんやりしている日番谷のそこら中にキスをすれば、自分のものだと主張するように赤いあとを付けていく。
「ばかっ……あと、つけるなッ」
「お前皆に愛されてるから」
「……ッ?」
「少し心配」
「……くろさき?」
なぜ日番谷は自分を選んでくれたのか、今更になって押し寄せる不安は自分ではうまく処理できない。
日番谷は酷く寂しそうな表情をしている目の前の恋人に触れた。
「なにか、あったか?」
「別に」
「……?」
優しく髪に触れてくる相手に日番谷が不安気に目線を上げれば、一護は困ったように笑って強く抱き締めた。
「名前で呼ばれてーな」
「名前?」
「とーしろーの特別になりてぇ」
恋人が無意識に作ってきた壁を破って、汚い感情も綺麗な感情も全て自分のものにしてしまいたい。
そんな欲望に駆られるのはやはり自分が相手に好かれているという自信がないからなのだろうか。
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