bleach(一+日)

□癖
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「それ、……癖なのか」

胸に当てた手のひらにそっと触れて、冬獅郎は俺を下から見上げた。

「これか?」

「…………」

こくん、と小さく頷けば俺の胸からそっと手を退けて頬にふれてくる。

「いつも、してる」

「……癖っていうか」




見ることに




勇気が居るだけだ。



傷だらけなのに一度も弱音を吐かない

お前の身体を。


「傷、痛むか?」

「……なんでお前が悲しそうな顔すんだよ、ばか」

上半身についたいくつもの古傷の他に、最近大きな傷が2つ冬獅郎の身体に刻まれた。



同じ氷輪丸の

傷跡。



「傷付いて欲しくねぇんだよ」

「それは俺だって一緒だ」

「抱き締めたら、痛くねぇか」

「……うん」

頬から伝わる指先の熱は、きっと勘違いなんかじゃない。

傷のせいで微熱が続いているのを、お前は皆にも俺すらにも隠そうとしているんだろう。


「冬獅郎」




泣けばいいのに。
苦しいなら、




悲しいなら
そう言えばいいのに。


甘えることが、

「ほんと下手クソだな」



「何が?」

「いや」

思い切り抱き締めるのは、今日はやめよう。

俺に傷を見せてくれるくらいには、

甘えようと
してくれているんだろうから。


「無事で良かった……」

んっ……と小さく漏れた声は外に響くことはなく、冬獅郎の甘さを今日も俺だけが知っている。

.

 

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