プロローグ

□はじまり
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生徒会になんて入る気はなかった。
ましてや生徒会長なんてありえない。
もとはといえば、生徒会長の推薦人になったのがいけなかったんだ。

生徒会顧問の先生に呼び出され、驚愕の事実を聞かされた。
「えっ繭巳が退学!?」
「あいつタバコ吸ってたのばれたらしい。そして、退学」
「はいっ!?」
いきなりすぎる出来事にあっけらかんとなる。
あれはじめた学校を蘇らせるために損な生徒会長なんて引き受けて。
成績は優秀。
小さいころからバイオリンを習って、全国から優秀な奏者が集まるスクールと高校を両立させて、海外のコンクールで優勝するほどの実力。
それに比例した礼儀作法もみについていて、可憐な純日本人。
だけど気取ってなくて、気さくで人気があった。
こんな性格からはこんなコト予測できない。
びっくりするしかなかった。
「俺も予測不能だったが…」
「なんでそんなコトに…」
あたしは思わずうつむいた。
「で…おまえ、推薦人を引き受ける際の契約書って、読んだか?」
「さっと目を通しましたけど…」
「細部まで覚えてない?」
あたしはこくりとうなずいた。
「じゃあもう一度説明させてもらう。ほれ」
先生は契約書を机に置き、ある箇所に赤ペンでさっとアンダーラインをひいた。
「読んでみ、大きな声ではっきりと」
「えっと…『生徒会選挙第21条、生徒会長になったものが万が一問題行動を起こすようなコトがあれば、連帯責任で推薦人も責任を負う』」
やばい、ここまで読んでなかった…
責任…
その内容がはっきりとされていないから、頭の中にいろんな概要が巡る。
「責任をとれ、と?」
「そうだ」
「えっと、内容が書いてないんですけど…一緒に退学だけは…」
一番最悪な事態を予想して気分が悪くなる。
「まあおちつけ…考えてみろ、生徒会長が退学になれば、生徒会長の席はどうなる?」
「えっと…空席になります」
「生徒会長が空席ってまずいよな?」
「はい」
「繭巳のほかに候補者はいなかった。候補のしめきり前に繭巳がしぶしぶ書類を提出したんだ。またすぐに候補者が出ると思うか?」
「思いません…」
「おまえ…退学だけはなりたくないんだよな?」
「はい」
「それなら…今日からおまえは島田高校の生徒会長だ」
「…あの聞こえなかったんですが」
「だからおまえが繭巳の代わりに生徒会長やるんだよ」
「あの最近中耳炎ぎみなんで…」
もちろん、うそだ。
先生が信じがたいコトを言うから、早く嘘だと言うてほしくて、何回も聞き返す。
「…おまえなあ…ガキじゃないんだから」
「やる気ないあたしみたいなヤツに生徒会やらせていいんですかっ!?」
「おまえ…理科の成績、1だったよな」
「うっ…」
「理科は授業さぼっても90点以上取れるとか言ってるからこんなコトになるんだぞ。生徒会長になれば首の皮繋がって留年は免れるが」
留年…
それだけも…
「わかりました…わたし、生徒会長やります」
「よろしい。サインをしろ」
あの悪魔の契約書とは違う、繭巳もサインしたであろう契約書が机の上におかれた。
「わかりました」
あたしはサインをした。
留年の危機だ…しかたない。
「これで手続き完了。さて…生徒会のメンバーの紹介だ。入っていいぞ」
先生の合図で男の子が3人入ってくる。
「先生遅いですよ〜」
「30分も寒い中廊下で待ってたんですから」
「先生、用件は」
「うん、すまなかった。用件だが…待望の新生徒会長が決まった」
3人の顔が輝く。
「マジ!?先生さすがだな〜」
「今度は誰ですか」
「まさかまた強情な手を使ってろくなヤツを連れてきたんじゃないでしょうね」
反応はさまざま。
「紹介しよう。こいつが今日から島田高校の生徒会長だ」



一瞬の沈黙の後で、それぞれ違う反応が返ってくる。
「わーい、今度の生徒会長はかわいい女の子だ♪」
目を見つめられて笑う。
「これからよろしくね」
爽やかに微笑む。
「おまえ…ほんとにいいのか?どうせ先生におどされたんだろ…やる気ないならボキが…」
そこまで言われたけど、あたしは思わず言い返した。
ここで黙ってたらきっと下ろされる。
それにこれから仲間として活動するのに、ちゃんと自分の意見を言わなきゃきっと信頼してもらえない。
「そ、そんなコトないもん…やるからには全力。うん」
あたしは拳を握った。
それを見て、その人はふっと笑った。
「よかった。そのくらいの勢いがあれば…な。安心した。つっかかって悪かった」
(よ、よかった〜)
あたしは腰が抜け床に座りこみそうになったけど、笑い返してその場を乗り切った。
「生徒会メンバーを紹介する。真ん中のヤツが3年のつるの。つるの剛士。副会長だ。変わり者の多い生徒会三銃士の中でも結構しっかりしている方だ。頼りたい時には頼るといい」
「あらためてボキはつるの剛士。よろしく」
(ボ…ボキ?生徒会三銃士?)
「右は1年の野久保。野久保直樹。会計だ。まあ数学は苦手で計算が早いと言う訳でもないしミスも多いしつるのには計算ミスをよく指摘されていたが。天然さで切り詰めた雰囲気を和ますコトもある。グチはこいつに言った方がいいだろう」
「野久保直樹です。なかよくしよ!」
(ほんとに会計務まってんの?)
「左は2年の上地。上地雄輔。書記だが…とにかく誤字脱字が多い。添削チェックは大変だぞ。しかしこいつはたまーにピンチの時にいいアイデア思いついたり意外性だけはある。最後の最後って時には上地頼みだ」
(ええっ、あたしも漢字は得意じゃないのにっ)
「以上。おまえらにはこれからもがんばってもらうぞ」
「はい」
返事だけはよい4人。
「早速だが…仕事があるんだが」
早速…
やっぱり忙しいのか…
「今度の全国高校アピール大会の予選。そこでは島田高校のよいところをパワーポイントとレポートと放送部との共同製作でビデオを作っての紹介をするコトになっている。島田高校では例年どうりに生徒会がするコトになった」
(知らなかった…)
「案はそこの3人によりココにかかれた3つ決まっている。さて、おまえはどれに力を入れるか?」
えっ!?
いきなり初日に言われても…
「さて、どうする?」
先生の目があたしを捕らえる。
「えっと…」

「パワーポイントで、改善された校内環境を紹介したい」
つるのと恋する
「レポートで、がんばっている生徒を紹介したい」
野久保と恋する
「ビデオで、今度の大会までの野球部のドキュメントを製作して紹介したい」
上地と恋する

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