Novel

□願望
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「古泉、お前の願いって・・・なんだ?」

唐突な彼の質問。

「おや、どうしたんですか?あなたが僕のことについて聞いてくるなんて珍しいですね。」

放課後の部室、今は涼宮ハルヒも長門有希も朝比奈みくるも居ない。
少し早く来てしまったようだ。
ということで、僕と同じように早く来てしまった彼とオセロをやっている。

「おい古泉、お前本気でやってるのか?弱すぎだぞ。
 ・・・つーか別に深い意味は無いんだが、なんとなく思いついてな。
 お前はハルヒの願望がどーたらっつー話はよくするが、自分がどうしたいとか言わねーじゃねぇか。
 だから・・・ちょっと、な。」

なるほど。
確かに僕は一度も自分の意見を言ったことがない。
したとしても、それは全部涼宮ハルヒ、言い換えれば機関の為であって自分の為ではない。

「なかなか鋭いですね。確かに僕は自分の意見をあまり言いませんが・・・」

「”あまり”どころか自分の為に発言したこと、無ぇだろ」

よく見ていらっしゃる・・・。

「ははは、そうですね。無いかもしれません」

・・・そんな嫌そうな顔をしなくても。
あなたは僕が話をはぐらかそうとすると毎回そういう顔をする。

「・・・僕の願望、ですか。うーん、そうですね」

本当に一瞬だったけれど、彼の目が光った。
そんなに気になりますか、僕の願いが。
いいでしょう。
言って差し上げますよ。
僕の素直なこの気持ちを。

「あなたが欲しい」

沈黙。
当たり前だ。

さぁこの後はどうなるんでしょうね。
彼は部屋から出て行くでしょうか。
それとも冗談はよしてくれ、と乾いた笑いで誤魔化すでしょうか。

・・・だから、正直言って驚いた。
彼の反応は、僕の予想のどれにも当てはまらなかったから。

彼は顔を真っ赤に染めて、零れ落ちてしまいそうな程に目を見開いている。
そして所在無げに視線を彷徨わせた。
何か言おうと思っているが、言葉が出てこないのか唇を戦慄かせている。

僕はてっきり拒絶されるものと思っていたから、
どうしていいか分からなくなった。

「なっ・・・ななななんで言ったお前が赤くなってんだよ!!」

え。
顔が赤い?
僕の?
まずい、頭が混乱してきた。

「・・・お前、本気か?それ。」

「そ・・・それは『あなたが欲しい』、と言った事に対してですか?」

「ああああ当たり前だっ!それ以外に何がある!」

可愛い。
混乱している頭の中でそう思った。
彼が愛しくて堪らない。

「本気ですよ。えらくマジです。」

いつもの僕のようにふるまったはずだが、上手くいっただろうか?

「・・・・そうか」

机に突っ伏す彼。

やはり、拒絶されるのだろうか。

彼は、深い、深ーいため息をつき

「お前と意見が一致するなんて、珍しい事もあったもんだな」

とだけ言った。

最初、それがどういう意味を持つ言葉だったのか、理解できなかった。

でも、その意味を理解したとき
僕は柄にも無く顔を真っ赤に染め上げたのだった。

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