定点観測
◆玄武岩時代その3
明けない朝
明けない夜はないというけれど
朝を無くすのは結構に簡単
自分抜きの朝はもうどうでもいいかな
その朝にさえ、今もつながる
自分抜きの朝はもうどうでもいいのかな
世界はいつも、あそこでもきれい
生きていくのに理由はないというけれど
わけもなく生きるのは結構につらい
カンカン日照りの山道を登り
振動する空気の向こうに
遠くなる夏を今も歩く
いつも歩く
明けない夜はないというけれど
朝を無くすのは結構に簡単
出水
岩も土も押し流し流れる
沸き上がる盛り上がる
堰堤を超える
雨も上がり水蒸気に満ち
磨りガラスの上に帆掛け船
四隅はしだいに白くなる
世界で最後の写真のように
嬉しい悲しいそれももう意味は無い
200年前の記憶のように
いつも誰か足りない記念撮影
四隅はしだいに白くなる
世界で最初の写真のように
世界で最後の写真のように
君の葬式
夏の酷さにくたびれた者は
秋の様子に安堵しつつ
もう一足飛びに冬に雪に心は埋まる
鉛の兵隊のごとく
季節も色々あるが
この国では夏が一番
床の下では朝に沢山生まれる者も
一夜で死んでいく者も
君の葬式をしよう
次は違う風にやろう
あらゆる記憶をやり返せない記憶を
切羽詰まるものにして
青のまま壁に張りつけた空になる
冬眠失敗
父の願い母の願い一身に受け生まれ来て
種をつなぐ使命受け生まれ来て
心ははやれど体はきかず
ポロポロ皮が剥がれゆく弱虫の心
冬眠失敗
春に屍さらす者よ
父がこいし母がこいしひたすらに恋しく
自慢の息子になりたかった
秋の朝白い空の下
また一枚悲しい皮が剥がれていく
冬眠失敗
春に屍さらす者よ
父の願い母の願い一身に受け生まれ来て
種をつなぐ使命受け生まれ来て
心ははやれど体はきかず
ポロポロ皮が剥がれていく弱虫の心
冬眠失敗
春に屍さらす者よ
1月の緑
1月の緑2月の花壇
一日ごとに日を伸ばし
かじかみながら待つ春は
希望というにふさわしい
3月の風重たい雲も
隠しきれなくなった時
見知らぬ頭上に満開の
ついていけずに立ち止まる
4月は人も笑いながら
しかし誰かのお墓のよう
親しい昔の墓のよう
天蓋の桜川面にも花びら
寒い嵐の細い音
黒く潰していく空も
今はかえって心安く
希望というにふさわしい
憧れの君
憧れの君は緑の目
山の中の白い岩に生えた苔
憧れの君はあくびをする
谷底の岩の上朝日を浴びる猿の子供
憧れの君は長い指
暑い草むらひっくり返るカマキリ
2012/03/07(Wed) 11:12
by bunbun
詩、なかなかいいですね。
私も(ひさしぶりに)書きたくなりました。
でも、年取ると詩より散文になっていく、今日この頃です。
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