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□世の中では誘拐と呼びます
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つめたい。確実に柔らかく暖かい、あのベッドの上ではなかった。体のあちこちが痛い。それにしても人が寝ている最中に、すなわち必然的に本人の許可なしに連れ出し、あげくの果てに冷たく硬い床のうえに放置たぁいい根性してんじゃねえか。
ほへーと一息ついてから体を動かそうとしてみた。無理だった。どうやら手足が縛られているらしい。おまけに目隠しときたもんだ。ええっと、目隠し+放置+拘束プレイですか?うわあマニアック。
いつまでもこんな状態でいるときっと頭の右半分が平らになってしまうのでできるだけ早く体勢を整える必要がある。手をこきらと鳴らして――関節を外した。するりと縄が落ちたのを確認すると息わ止めて関節を入れることにする。

「っ――!」

この痛みにだけはいつまでたっても慣れやしない。少し力のはいらない右手で太ももに隠しておいたナイフを握る。足の縄をきってし目隠しも裂く。ああ不快感は80%消え失せた。
見回してみると結構な広さの倉庫だと分かる。ちらりと金髪の男が見える気がするがやっばり気のせいだろう。近づいてくる気もするがやっぱり気のせいだ。それよりも出口を探さねば。
「なんで無視するの」
「あらシャル兄、奇遇、ね」
「拗ねるなって。手荒な真似をしたのは謝るよ、ごめん。でもそうでもしないと来てくれなかっただろ、俺の頑固な妹さんは」
「用件は?」

まったく、あの親にしてこの子有りだ。いやいや、あたしは例外。


世の中では誘拐と呼びます
(兄妹じゃなかったら警察沙汰だぞゴラ)


080612

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