5927

□一人じゃなくて、二人で。
1ページ/6ページ

ある日。
今日は長期の任務を終えて、獄寺君が帰ってくる日だ。
朝から楽しみで楽しみで浮足立って。
わくわくしてた、その時だった。
「ツナ!」
後ろから、やけに焦った声。
振り向きながら、問う。
「何!?山本!」
「獄寺が、怪我したらしいぜ」

頭が一気に真っ白になった。
…獄寺君…!?
嘘、怪我したの…!?

「獄寺君は、何処?」

まずは会いたい。
状態を知りたい、っていうのも有るけどさ…まずは、とにかく顔が見たかった。



「獄寺は、多分自室だな」
「部屋…」

…何で医務室行かないの?
酷くないから?…それとも、いつも通り、「面倒だから」とか言わないよね…?




かつん、かつん、と自分の足音だけが響き渡る廊下。
皆外に任務に出てるか、机に向かって仕事中なんだろう。
とても静かなのに、…いや、静かだからこそ、かな…とにかく、自分の足音はうるさいくらい響いていた。
目的の部屋までは、目を閉じていてもすぐに辿り着ける自信が有った。
だって、毎日の様に行ってる場所だし…


目的の部屋のドアの前に立つ。
深呼吸して、ノックした。
「獄寺君!居る?」
「はい」
思ったより普通…?と思ったのは、姿を見るまでだった。
がちゃ、と扉を開いて現れた獄寺君は、服の間とか、見える範囲だけでもかなり包帯が巻いてあって、それでも何箇所かは血に染まり、自分で巻いたからなのか、かなり酷い有様だった。
「獄寺君…!大丈夫なの…!?」
「あ、はい!十代目!」
部屋に入っていいかと聞けば、当たり前の様に、良いですよ、と肯定されたから、俺は獄寺君を引き連れて、部屋に入った。
「…」
後ろでパタン、と扉が閉まる音がした。それを確認して。
「…獄寺君、何で医務室行かないの?」
「…あの…それは…」
「前、怪我したら我慢しないで痛いって、言ってよって…ちゃんと、薬とか貰って治しなよって…言ったよね?」
「…はい」
「分かってるよね?」
「…すみません、十代目…」
「…じゃあ、何で…」
服の裾をく、と摘んで。
「何で…」
「十代目、あの、ですね…」
獄寺君は、俺の顔をしっかり見て。
視線をしっかり合わせて。
一言一言、丁寧に言ったんだ。
「十代目、きっと俺が医務室に行ったって聞いたら、心配すると思って…行けませんでした…すみません、逆に心配かけて…」
獄寺君は、静かに俺に言ったんだ…
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ