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□残酷で綺麗な、嘘つき。
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「嘘…でしょ?」
「こんな嘘ついて何になる、ダメツナ」
「…そう…だけど…」
そう、分かってるよ、こんな嘘誰も喜んでつかないよね。
…でも、その話を信じたいか信じたくないか、という事とは全くの別問題であって。
…俺は、信じたいかと聞かれれば、即答したろう…
「信じたくない」と。
「リボーン、本当にもう…」
「あぁ、もう、手遅れだな。…あと、一週間でも違えば、って医者も嘆いてたぞ」
「そっ…か…」
俺は、傍目からでもはっきりと分かるくらいがっくりと肩を落とし、とぼとぼと歩きだした。
「まぁ、残りの時間有効に使うんだぞ…その為に、休暇まで取ってやったんだからな」
後ろから、最後にリボーンの声が背中を見送った。
「…獄寺君」
口から零れ出た名前は、誰の耳に届くことの無いまま空気に溶けていった。
この名前の主は、俺の大切な人。
俺の、愛する人。
…俺の、右腕、何て言ってるけど。本当は、俺の…
「…恋人、かぁ…」
思いを告げられたのは、何時だっただろうか?
真面目な顔、しちゃってさ。
かっこよかったなぁ、あの時。
「俺は、貴方が居ないと生きている意味もありません。貴方が必要なんです。…部下のくせに、図々しい願いなのは百も承知しています」
そう、そう言って、俺の手を取って…
「…俺と、付き合ってください。…絶対、貴方を幸せにします。貴方の為ならなんでもしますから」
って、そうやって俺への思いを獄寺君は、教えてくれたんだよね?
君さえ居れば、俺、幸せなのに、な。
なのに神様は酷いんだよ?
俺の手から、獄寺君を連れ去って行こうと今も獄寺君から俺の手を離そうとしてる。
獄寺君から、命を取って行こうと、してるんだよ…!?
…この世界の運命を決めるのが神様なら、俺は神様を殺してでも、運命を捩曲げてやりたい。
…獄寺君の、余命を延ばしに延ばしたい。
置いていかれるんだ、俺。
獄寺君に、この世に置いていかれるんだ…?
獄寺君を連れていこうとしてるのは、獄寺君の体に入り込んだ毒。
君は何もしてないのに、戦った相手の刃物に毒が塗ってあったから。
…だから、体に毒を受けた。