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□叶うなら、もう一度。
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再びアジトに帰ってきた貴方は、もう貴方としての活動をしていなかった。

紅に染まった。
昨日までは真っ白で、一点の汚れすらなかったスーツ。
俺に、「似合う?」なんて笑っていた、貴方。
そして、コンクリートの床でさえ…


「十代目…」


呆然と、呟く。



ふわふわしていた髪の毛に指を伸ばせば。
少しがさがさしてしまっていて。

日だまりの様に温かく柔らかかった頬は、氷の様に冷たく固くなり。




なにより、何回呼んでも、叫んでも、揺さ振っても開かない瞳と、応えない唇が…

…俺に、教える…



「十代目は…生きていない」

と。




「ツナ!」
暫くして、一人だった部屋に、もう一人が現れる。
顔は上げない。

「目、覚ませよ!…起きて、くれよ…ツナ!!」

…やっぱり、そうだ。
隣に来たのは、雨の守護者…

「待てよ!まだ…まだ死ぬのは早いんだよ…っ…ツナ…」

コンクリートにぽたぽた、染み込んでいく、涙が。
コンクリートの上、染みとなり広がってゆく。


「ボンゴレ…!」
また一人。

「…嘘…でしょう…?」
守護者最年少の、雷。

「ボンゴレ!何で…こんな、」
頬に伝う、雫。
とめどなく溢れてゆく、沢山の雫。


…そう、いえば。
俺は、
…涙が、出ない…十代目が居なくなって、寂しいし、悲しい、のに。



「ツナ…どうして…」
「山本氏、大丈夫ですか…?」
「ランボこそ…大丈夫なのか?」
「…辛い、ですかね…」
二人してメソメソ泣いているから。

何で、俺は泣かないのか。
全く分からなかった。




感情の一切が欠如しまったかの様に。



「十代目…十代目…?」
ぼんやり、呟いた。
何で、十代目が…死んでしまったのですか?
貴方は、…悪くなんて、無いのに…



十代目は、何も言わない。
言っては、くれない…





そういえば、十代目は言っていた。


「俺、死んでも。…ずっと、獄寺君の傍に…」



…貴方は、傍に居ますか?




「獄寺…獄寺!!」

「なんだよ…山本…」
「俺達、連絡とかしてくるから…」
「獄寺氏はボンゴレの傍に居て下さい」
そういって、二人は出ていった。
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