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□記憶と風。
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窓の外、輝く光は太陽…だった筈。
小さくなってく鉛筆に比例するように、増えていくノート。
また…何かが薄れる。





この部屋は、今日も小さな窓からの光だけしか入って来ない。
電気は、明る過ぎて嫌になって割ってしまった。
…らしい。

…これは、日記で知った…否、思い出した。



俺の記憶は…最近残ってくれないんだ。





それに気付いたのは、いつも傍にいる…獄寺君。
その頃、俺達はイタリアに行って結構経って、慣れ始めた頃、だった。
獄寺君の話では、その少し前の頃から、よく、忘れるなぁ、とは思ってたんだって。

…それで、医者にかかったら…俺は、前有った任務の時出来た傷が原因で、記憶が…残りにくいようになったんだって。





そのことを知った獄寺君は、俺が付いていたのに、俺が至らなかったから…そう言って、必死に謝って。
…君のせいじゃ、無いよ
って笑いかけても、獄寺君は、笑ってくれなかったから。

…あぁ、本当に、俺はこうなったんだ。って自覚しちゃって、怖かった。
だから、獄寺君には、
「笑った顔を、覚えていたいから…笑って、こっち向いてよ」
そう、言った。
そうしたら、獄寺君は、笑ってくれた…悲しい笑顔だった。
俺のその一言が、どれだけ君を傷つけただろう。
俺が、そんなに気にしちゃ駄目だ。

そして、俺達の話の中から、その話題は消えた。



それからは、とても穏やかな日が続いた。
毎日、獄寺君は俺の右側に居てくれて、たわいもない話をしたり、散歩したり。
凄く、楽しかったんだ。


でもね、
忘れようとして、忘れるのは、違うことばかりだった。



俺は、どんどん、仕事内容や、アジトの中の道、ファミリーの皆の名前を忘れたりして…
気付いたら、かなりの事が思い出から、消えていた。



でも、その事を気付かれたくなくて、忘れたくなくて…
俺は、毎日笑った。
…いつしか、笑うことすら出来なくなるまで。





…もう一つ、始めた事が有るんだ。

…日記を、書くこと。

日記なら、好きな時読んで、思い出せる。
書きながら、覚えられるかも知れない。



そうして、俺はノートに鉛筆を毎日走らせた。
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