小説

□恋しいあなた
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バカな恋だと、気づいていた。どんなにあがいても叶わぬ…淡い恋だと。








「あー…侑士おせぇなぁ…」
部室で恋人を待つ、俺の想い人は、そういって俺の頬をつねる。軽く手で払えば、離れるそれになんの意味があるのか俺にはさっぱりわからない。

「そーですね。やっぱりシングルスは責任が大きい分、練習が長い…」
そう言いかけて、やめた。目の前にいる人の表情が曇ったことに気づいたからだ。


「…そうだな。」
背を向けて体育座りした彼は、恋人とのダブルスを解消して今は俺と組んでいる。俺に不満があるわけじゃないんだろう。
恋人といる時間が公私ともに減ったこと、そして恋人がどこか遠い存在に思う今が、彼をこんな表情にさせるのだ。
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