小説

□lovable(忍岳)
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今日は中学の卒業式、校庭の桜が満開になってるのを喜んで、目の前を走り回る岳人を見ていると、ふと思い出す三年前の春。

岳人とは中学一年の時に屋上で居場所の取り合いしたんがそもそもの出会いで。確かそん時も桜が咲いとって、屋上にまで花びらが舞い上がってきとるのと岳人が合わさって見えて、まるで岳人が桜の妖精みたいに見えた…ちゅうなんやベタな一目惚れを俺がしたんがこの恋の始まり。
卒業式の今日に今更思い出すことでもないんやろうけどな。
(しかも未だに片思いっちゅー切ない話やで。)

「あんま走るとこけるで。」
「平気だって!マジ綺麗っ!」

たぶん岳人は覚えてないんやろうけど俺はあの日から、ずっとお前のこと…好きで好きで、せやけどもし気持ちを伝えて、今の関係が崩れてもたらと思うと怖くて。せやから臆病で卑怯な俺は、ずっと親友という特等席に座りながらも岳人をやましい目で見て、ほんま最低やで。

「なぁ、侑士。」
「どないしたん?」
「確か、侑士と初めて会ったときも桜、咲いてたよな!」

思わず返答に困った。たぶん今、俺の顔おもろいことになっとると思うわ。

「…せやな。覚えとったんや?」
「忘れるわけねーだろ。」

さっきまではしゃいでた岳人が、真顔で俺の顔を見つめた。やめてや、そんな顔で見つめられたら…。
(抱きしめたくなってまうやんか)

「侑士、高校に行ってもずっと一緒だかんな!」
「当たり前やろ?」
俺がお前の隣、離れるわけないのにな。なんも知らへん岳人は、俺の返事を純粋に受け止めて満足そうに笑って頷いとる。
(ごめんな。)
なんや騙してるみたいな気分がして心の中で一言、岳人に謝った。

「桜、ずっと一緒に見ような」
「せやな、あと3回は少なくとも一緒に見れるな。」
「…違うって。」

少しトーンの下がった声に気づいて岳人に目をやると、頬が桜みたいに色づいとる。
「え?え?」
「にぶいんだよ、侑士はっ!」
目に少し涙を浮かべながら岳人は俺を見上げて怒鳴る。
「ずっと一緒にいたいいんだよ!だから…」
これは、もしかして
「岳人…それは、愛のっ…!」
「だぁーーーーーっ!クソクソ!言うなぁ!!!!」
恥ずかしそうに首を横に振る岳人を今俺は
「なぁ、抱きしめてええ?」
「っ!…聞くなっ!」
我慢できんくて、おもいっきり抱きしめた岳人の肩は少しふるえてて、愛しくて。岳人はこんなに勇気だして言うてくれたのに、俺ってめっちゃ
「かっこ悪いわ…」
「なにが?」
「いや、なんも。それよりなぁ…岳人」
「ん?」
『愛してるで』

岳人の耳元で囁いた愛の言葉。耳まで真っ赤にして俺の胸に顔をうずめる岳人は、もうそれはそれは。
桜なんか、かなわへんほど可愛くて綺麗やった。

なぁ、ほんまお前が愛しいで。
愛すべき君。


fin

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