曖昧な力

□第一章@
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 その日の朝,久遠悠紀は町外れの発掘現場にいた。当然いつもなら行かないような場所で,自分自身,用が会ったワケではない。
 そこによく顔を出す幼なじみに用があり,その幼なじみが例によってこの発掘現場に居るからだ。
 「おや……久遠君じゃあないか!!どうしたね」
 急に後ろから声をかけられ「おわっ!?」などとみっともない声を出してしまう。声をかけてきたのは幼なじみの父親,功刀 敏文であった。
 敏文はかなり有名な考古学者で業界ではその名を知らない者はモグリだと言われる程の実力者だ。悠紀も歴史や神話は好きな方なので敏文とはかなり気があう,だからというワケではないがゆくゆくは彼の元で働きたいとさえ考えていた。
 とにかく,悠紀にとって敏文とはただの幼なじみの父親ではなく,尊敬すべき偉人なのだ。
 だが,だからといって彼にベタつくのは気が引けた。
 まだ自分は彼の元で働くには若すぎるし知識も無い…それに顔を出すだけでも今みたいに無駄な時間を過ごさせてしまう,もしかしたら自分と話してるこの時間を作業に使えば世界的な発見があるかもしれないのだ…そう考えて,悠紀は毎日でも来たいという衝動を自重していた。
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