無意味こそ意味 番外編


















りんの残り香漂う林の中に殺生丸の姿はあった。
今はりんに耐えてもらうより他ない…すまない…と心でりんに告げ小さく溜息を漏らした。


背後の大木の葉が奇妙な音を立てる。
それと同時に暫く前から殺生丸の鼻を攻撃する、知った嫌な臭い。

不自然な葉の鳴りに殺生丸は振り返り、大木を見上げその主を視界に入れた。





見上げた先には朱の袴。
殺生丸は眉間に皺を寄せ、袴の主に問う。







「何だ、犬夜叉…。」



大木の枝に座り殺生丸を見下ろしていた犬夜叉は、枝から身軽に跳び降りて殺生丸の背後に立った。
犬夜叉は腕を組み地面のある一点を見詰めて、殺生丸に返答をした。





「りんの血の臭いがしたから辿ってみたら此処だった。りんに何かあったのか?」




「…村に帰れば解る。」




犬夜叉は不満そうな顔を殺生丸に向け、再度大木の枝に跳び乗った。

殺生丸を横目に一瞥くれてみても殺生丸は何の反応も見せず正面を向いたまま。


不満を表す舌打ちを聞こえる様にして、少し離れた大木に跳び移ろうと構えた時だった。





「犬夜叉。」





殺生丸からの思わぬ呼び掛け。
犬夜叉は跳ぼうとした足を止め、不思議そうな顔で殺生丸の姿を見下ろしている。




「あの女とはうまくやっているか?」




犬夜叉は額から脂汗が滲むのに気付く。

夢にも思っていなかった殺生丸の言葉に目を見開き、どうしちまった、殺生丸…と顔に書いた様な表情をして、返答に焦っていた。




「無用な事を聞いた…」



殺生丸はその場から飛び立ち青空を駆ける。
その背に漸く投げ掛けられた犬夜叉の言葉が殺生丸の求めた言葉なのかは…殺生丸以外には誰にも解らない。




 「お前次第だ、殺生丸。お前が本気になれば出来る。」




殺生丸はどこか上機嫌に空を駆けた。

それが犬夜叉の言葉による物なのか、それも殺生丸以外に知り得る者はいなかった。


半泣きで殺生丸の名を呼び、阿吽を手綱で引っ張り主を追い掛ける邪見の姿。
そんな殺生丸一行を見詰める犬夜叉の表情もどこか上機嫌だった。






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