short novel
□あなたの幸せを願う
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私は彼の一言にその場から必死に駆け出した
視界を涙が遮る中、どこに向かうわけでもなくただひたすらに走り続ける
頭の中でこだまする彼の言葉───
『別れよう』
薄々気付いてはいた
彼の心に芽生えた一つの恋心
私は彼に問いただそうとしたが、私には出来なかった
真実を、知りたくなかった
認めたくなかった
───気付きたくなかった
私はいつでも彼に思った通りに行動して欲しかった
だから彼の望むことは受け入れたいという、私なりの愛情表現のつもりだった
彼には、
幸せになって欲しかったから───
それが今、こんなにも自分を苦しめている
胸が締めつけられるように痛む
私はふと立ち止まり、荒い呼吸を整えた
そして吸い寄せられるように空を見上げた
オレンジ色の淡いグラデーションがかった空に、より切なさが込み上げてくる
本当に好きだった
だから彼が幸せになってくれれば私も幸せなはずだったのに───
切なさだけが心の中にうずまいて、私の中の本心が彼を離そうとしない
───こんなにも好きだったなんて
正直自分でも驚いている
あまりのことに微笑した
頬には涙が伝い、雫となって地面に落ちる
これで彼を思うのは最後───
だから最後に
あなたは今まで以上に幸せになって───
end...
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