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□ラフメイカー
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「サクラちゃん!」
一人で修行に励んだある日の帰り道、遠くに友人と並んで歩くその背を見つけ、ナルトはさっきまでの疲れもどこへいったのか、喜び勇んで走り寄る。
声に振り返った彼女もまた、今日は初めて会うチームメイトが寄ってくるのを笑って待った。
聞くと二人も師のもとで修行に励んだ帰りだという。
「あんたまた傷だらけねー。
治してあげようか?」
泥だらけのナルトの姿に、ついいのも苦笑が漏れる。
「サンキューいの、でもこんぐらいなら平気だってば。
それより腹減っちまったってば、一楽いこうよ、ね、サクラちゃん。」
腹の虫の鳴き声と共にそう言えば、サクラは「しょーがないわねぇ」と了承してくれた。
「いのも行くかってば?」と聞くと、申し訳なさそうな顔で首を振る。
何か用でもあるのかとどちらともなく聞こうとしたとき、後ろから声が聞こえた。
「いのー、探したよ。ここにいたのか。」
「チョウジ、シカマル!」
声がしたほうでは手をあげるチョウジと、それとは対照的に手をポケットに突っ込んだままのシカマル。
「早くー!
僕もうお腹ペコペコ。」
「迎えとかめんどくせーことすんじゃなかったぜ。
おい、親父たち待ってるぞ。」
ぼやきながら歩み寄ってくるシカマルの言葉に、ナルトとサクラはいのへ向き直る。
「ゴメン、先約。
また誘ってよ。」
「うん、叔父さんにヨロシク言っといて。」
「うん、じゃあね。」
そのまま二人のもとへ走り去っていくいのを見送る。
(あ…)
どこか空気が変わったのを感じ、ナルトは心の中で声を上げた。
斜め前を見ると、去っていく三人の後ろ姿を見つめるサクラの横顔が見えた。
無表情のその瞳に、どんな世界が見えているのか、自分が一番わかっている。
「サク…」
「いいなぁ…仲良し。
幼なじみっていいわね。」
振り返って微笑む彼女が、泣いているように見えて胸が締め付けられる。
そんな顔で笑わないでくれ。
そう願っても、彼女を笑顔に出来るのが自分ではないことはわかっている。
「俺らも仲良しだってば!」
だけどもそんな彼女を目の前にして放ってなどおれないのは、彼女が大切な存在だからだ。
「はぁ?
はいはい、仲良しね。
幼なじみではないけど。」
あしらうように手を振って歩き出したサクラの後を慌てて追いかける。
「あ、あいつら以上の幼なじみは無理だけど…」
まるで相手にされなくても、君を安心させてあげたいんだ。
「これからはずっとサクラちゃんの側にいるってばよ。
絶対に遠くに離れていったりしない。」
自分で言って、プロポーズみたいだと思って慌てて後から付け足した。
「サスケも…必ず二人で取り戻す!」
彼女が想い続けるライバルの名を出しても、やっぱり告白のようになってしまった。
意識してしまった自分の顔が今、赤くなってやしないかと冷や汗が出そうだが、結局目の前で驚いたように瞬きも忘れてこちらを見つめる彼女を目にして確実に赤くなったのを感じた。
クス…
(へ?)
「ありがと。
まぁあんたとはアカデミーから一緒だもんね。
うん、これからだって私たち仲間だもんね。」
そう言って微笑む彼女は、仲間からの言葉としてとったようだった。
何故だろうかと思っていると、再び歩き出したサクラの声が耳に届く。
「夕陽が綺麗ね。
里中真っ赤だわ。」
ゆるゆると顔を彼女が向く方へ向ければ、目に写る世界が全て真っ赤に染まっていた。
途端に全身から力が抜けていくのを感じ、それと共にどこか残念な気持がしたが、それには気づかない振りをして先を歩く彼女を追いかける。
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