ジークフリートの死


クリームヒルドから真実を聞かされたブリュンヒルドは怒りに震え、自分の運命を呪い、自分にこのような辱めを与えた全てものに対する復讐を画策しました。
 そんなブリュンヒルドを見て、ギュンターは彼女のことを心配しました。そこで彼は、今までひた隠しにしていた秘密がブリュンヒルドに発覚したことを知ったのです。ギュンターは、それを否定しましたが、ならば自分があなたと交換した腕輪を見せてくれ、と、ブリュンヒルドは言いました。しかし、それはジークフリートが持っているのですから、見せようにも見せられません。
 ブリュンヒルトは、ギュンターにジークフリート殺害を唆しました。ギュンターがジークフリートを殺害して、彼がジークフリートより勇敢であることを証明しなければ、自分はギュンターのもとを去ると脅したのです。ブリュンヒルドを心から愛する彼は悩み、信頼するハーゲンにこのことを相談しました。ハーゲンは、そのようなことをすれば義兄弟の信義に悖るし、それにジークフリートがいれば、自分たちは強者になれるのだ、と言って反対しました。
 しかしギュンターは、弟のグッドルムを唆して、ジークフリートを殺害することに決めました。彼ならば、信義とも誓約とも無縁だからです。
 ジークフリートの最期の場所については、いつくもの説があって判然としません。民会の帰りに襲われたとも、森で殺されたとも、就寝中に討たれたとも言われています。エッダ「シグルドの歌」では、屋外で討たれたことになっています。ここでは、「シグルドの歌」に従い、ジークフリートは屋外のどこかで討たれたと考えます。その状況は想像するしかありませんが、討ったのは間違いなくグッドルムでしょう。彼が、ギュンターに唆された末に実行したのです。そして、グッドルムもまた、怪我を負ったジークフリートに討ち殺されたに違いありません。もしかしたら、傷を負ったジークフリートにとどめをさしたのは、ギュンターとハーゲンだったのかも知れません。
 いずれにしろ、一緒に出かけたはずなのに、ギュンターとハーゲンは帰ってきてジークフリートは帰ってきませんでした。クリームヒルドはジークフリートの行方を尋ねました。それに対し、ハーゲンが自分たちがジークフリートを殺したと告白しました。そしてジークフリートの愛馬のグラニは死んだ主人の上に、ずっと頭を垂れている、と。
 ジークフリートが死んだことを聞いて、ブリュンヒルドはギュンターたちに言いました。ジークフリートが生きていれば、いずれ全ては彼のものになっていただろう。彼が死んだ以上、全てを思いのままにすればいい、と。
 そして、ブリュンヒルドは一度、心の底から笑いました。そして、笑いながら泣いていました。
 クリームヒルドは、ギュンターらを呪いました。その夜、酒宴が催されました(正気かいな?)。みんなが寝てしまっても、ギュンターのみが夜遅くまで起きていましたが、明け方近くになって、ブリュンヒルドが目を覚まして言いました。
「私は夢を見ました。ギュンターは戦乱の中で死に、ニーベルング(ニヴルング)一族も滅びるでしょう。ジークフリートはあなたと盟約を交わしたのに、あなたは彼に悪業で報いました。彼は、あなたとの誓いを守り、私の純潔を守ったというのに」
 ブリュンヒルドは、こうなった以上、長く生きていくつもりはありませんでした。
 クリームヒルドは、ジークフリートの遺体の側で(いつ回収されたのかはわかりませんが)、いつまでも佇んでいました。いろんな人々が、彼女を励まそうとしましたが、彼女の悲しみは癒えませんでした。
 ギュンターは、ブリュンヒルドが死のうとしていることを悟り、何とか思いとどまらせようとしました。しかし、どのような努力も報われることはありませんでした。
 ブリュンヒルドは、自らに剣を突き刺して果てました。しかし、その死に際に多くの不吉な予言を残し、そして自分とジークフリートを共に火葬してくれるように頼みました。
 その彼女の最後の願いを、ギュンターは果たしました。
 ジークフリートとブリュンヒルドの亡骸は共に焼かれ、その火葬の煙は細く長く天へと昇っていったのです。
 
 ジークフリートの伝説は、ここで一応の完結を見る。しかし、クリームヒルドやギュンターの物語は、まだ続く。以下、彼らのその後書く。

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ