3

十二年の間、シルディングの友は悩みを忍んだ。
あらゆる災いを、深い悲しみを。それゆえ人々に、
人の子たちに歌で悲しく知られるようになった。
グレンデルは長い年月、罪と争いとを重ねていた。
絶えざる争いを、デーン族の誰とも平和を望まなかった。

こうして多くの罪を、人間の敵は、恐るべき独行者はたびたび犯したが、
玉座にだけは近づけなかった。宝にも。主を恐れたので。
神の愛も知ってはいなかった。

それはシルディングの友なる君の大きな苦しみ、心の悲しみだった。

時には彼等は異教の社で献納の誓いをした、
祈詞を述べた。魔神が民の不幸のために、彼らを助けるようにと。
これは彼等の慣わしであった。異教の希望であった。
天主を知らなかった。行状の審判者を、主なる神を知らなかったのである。



4

グレンデルの噂を聞きつけたベーオウルフが、デーンの国を訪れ、ロースガール王に謁見する場面。


このことを、家にあってヒゲラークの従者は聞いた。 ゲータ族の間で最も秀でた者が、グレンデルの所業を。その人は人間のうちで最強の者だった。この戦いの主は、白鳥ゆく波路越えて行きたしと言った。  
勇者はゲータの民のうち、最も勇気ありと見られる者を選び取った。  
その15人に己を入れて船へと向かった。

波路越え、追手風受けて、舳に泡立たせて船は出た、さながら鳥のように。  
ついには次の日、さだめの時に、海ゆく人々は陸を見た。海辺の岸が輝くのを。

『今は我が行くべき時ぞ。全てをしろしめす父なる神は、  
み恵みによって汝らを旅路安らかに守り給え。我は海へ行こう、敵兵を見張るために。』  

厳しく兜戴き、やがて彼は館内に立った。
ベーオウルフは語った、その身には鎧が輝いた。

『ロースガールの君よ、すこやかに在せ。我はヒゲラークの身内にて従臣。  
今はグレンデルと、かの怪物と、ただ一人相見えよう。シルディングの守り主よ、我に拒みたまうな。  
かくて遠くより、ヘオロットを掃き清めんがために来たからには。  
御身はもはや、我が骸の始末をしようと患うに及ばない。  
ヒゲラークに遣わし給え、もし戦いが我を捕らえるなら、  
我が胸の装う最上の鎧帷子のものを、最上の服を。』

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