□冥姫 第五十一話
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自分で言っておきながら、つくづく参考にならないと思う。


二人の視線は私に集中しているので表情がよく見える。


…土方さんは妙に納得したような顔をしていた。

今にも『そうだろうな』と言いだしそう。


沖田さんはいつもと同じ表情。


「美月ちゃん、俺は───」


いつもと同じ口調に抑揚だったから、反応が一瞬遅れた。


沖田さんは私の手を取り早足で歩きだす。

急だったので、私は後ろを付いていく形になる。


「総悟!?」


土方さんも驚いているようだった。


「沖田さん!本命さんに見られたら誤解されますよ」


もう一度説明した。


本当は自分のために言った言葉だと自覚している、でも事実として無いとは言いきれないことだと思う。


私は沖田さんの恋路を邪魔したいわけじゃないからね。


「沖田さん!……」


反応がないので聞いてないのかと歩調を早め、横顔を見て、何も言えなくなる。


悔しさと辛さを混ぜ合わせたような顔をしていた。


その表情があまりに予想とかけ離れていたので足が止まりかけ、後ろを付いていく形に戻る。


ここで一つの考えが浮かんだ。


………沖田さん
…………もしかして
……………振られた?


そう考えると今の状況にツジツマが合う。

まず、あの表情は振られたから。

次に私の手を握っているのは振られた相手に、見せ付けたいから。

『俺にはこの娘がいるから気にするな』と、相手を安心させたいのか、

『お前なんかいなくても俺にはこの娘がいる』と、腹いせに見せ付けたいのかは分からない。


急に歩きだしたのは振られた相手を見つけたから。


………ん?このままだと本命さんと鉢合わせになるんじゃない?

すごく……気まずいのでは………。


力を込めて沖田さんを止めた。


「お、沖田さん!たこ焼き!冷凍食品じゃないかチェックするんですよね!?」


様子を見守るようにして付いてきていた土方さんにも声をかける。


「マヨネーズ、冷凍じゃないかチェックするんですよね!?」



ベンチに座り、沖田さんが奢ってくれたたこ焼きをパクパク食べて、土方さんが奢ってくれたお好み焼きをパクパク食べる。

主食がお好み焼きで、おかずがたこ焼き。


美味しいけど
炭水化物、炭水化物。


他にもクレープとか、カステラ玉とか、かき氷とか屋台を回り

食べ終えたころには満腹になっていた。


「そろそろ帰るか」

「そうですねィ」

「私もう少し見回りしてきます、ね?」


ね、のところで二人に手首を掴まれた。


「お前は未成年なんだから一番に帰るべきだろ」

「土方さんの言うとおりでさァ」


本日二度目、強制連行。

 
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