自分で言っておきながら、つくづく参考にならないと思う。
二人の視線は私に集中しているので表情がよく見える。
…土方さんは妙に納得したような顔をしていた。
今にも『そうだろうな』と言いだしそう。
沖田さんはいつもと同じ表情。
「美月ちゃん、俺は───」
いつもと同じ口調に抑揚だったから、反応が一瞬遅れた。
沖田さんは私の手を取り早足で歩きだす。
急だったので、私は後ろを付いていく形になる。
「総悟!?」
土方さんも驚いているようだった。
「沖田さん!本命さんに見られたら誤解されますよ」
もう一度説明した。
本当は自分のために言った言葉だと自覚している、でも事実として無いとは言いきれないことだと思う。
私は沖田さんの恋路を邪魔したいわけじゃないからね。
「沖田さん!……」
反応がないので聞いてないのかと歩調を早め、横顔を見て、何も言えなくなる。
悔しさと辛さを混ぜ合わせたような顔をしていた。
その表情があまりに予想とかけ離れていたので足が止まりかけ、後ろを付いていく形に戻る。
ここで一つの考えが浮かんだ。
………沖田さん
…………もしかして
……………振られた?
そう考えると今の状況にツジツマが合う。
まず、あの表情は振られたから。
次に私の手を握っているのは振られた相手に、見せ付けたいから。
『俺にはこの娘がいるから気にするな』と、相手を安心させたいのか、
『お前なんかいなくても俺にはこの娘がいる』と、腹いせに見せ付けたいのかは分からない。
急に歩きだしたのは振られた相手を見つけたから。
………ん?このままだと本命さんと鉢合わせになるんじゃない?
すごく……気まずいのでは………。
力を込めて沖田さんを止めた。
「お、沖田さん!たこ焼き!冷凍食品じゃないかチェックするんですよね!?」
様子を見守るようにして付いてきていた土方さんにも声をかける。
「マヨネーズ、冷凍じゃないかチェックするんですよね!?」
ベンチに座り、沖田さんが奢ってくれたたこ焼きをパクパク食べて、土方さんが奢ってくれたお好み焼きをパクパク食べる。
主食がお好み焼きで、おかずがたこ焼き。
美味しいけど
炭水化物、炭水化物。
他にもクレープとか、カステラ玉とか、かき氷とか屋台を回り
食べ終えたころには満腹になっていた。
「そろそろ帰るか」
「そうですねィ」
「私もう少し見回りしてきます、ね?」
ね、のところで二人に手首を掴まれた。
「お前は未成年なんだから一番に帰るべきだろ」
「土方さんの言うとおりでさァ」
本日二度目、強制連行。