□冥姫 第五十一話
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「美月ちゃん」


沖田さんに呼ばれて目を向けると片手を上げている。


その手を手でポンと叩き、タッチ交代。


「近藤さん」


沖田さんが声を掛けた。


「あん!?」

「今のままじゃ、バカップルだけじゃなく罪のない市民まで怯えちまいまさァ
祭りを念頭に入れて見回りしやしょう」


念頭の結果、
お面にフンドシ、右手に刀、左手に太鼓

近藤さんじゃなかったら不審者にしか見えない格好。


「浴衣でイチャつく悪いカップルはいねーが!」


悪い子を戒める鬼と似たようなことを言いながらも、内容がかなり違う。


「総悟……悪化してる」

「警察に通報されそうですね」

「通報されても近藤さんなら逃げ切れる
お面被ってるし、真選組だとバレる心配はないでしょ」

「トカゲのシッポ切りか」


「俺はこれから、たこ焼きが冷凍食品のたこ焼き使ってないかパトロールしないといけないんで」

「待て!俺もお好み焼きに冷凍してたマヨネーズ使ってないかパトロールする」


フォローの達人まで「もうしらね」と、あっさり投げ出した。

しょうがない、私だけで監視しよう。


「美月ちゃんも行きやしょうぜ」


右手首をがっしり捕まれた。


「そうだな、そうしろ」


左手首をがっしり捕まれ、強制連行された。


考えようによっては両手に花なのに、ちっとも嬉しくない。

理由は分かっている
手首を捕まれてるからだ。

これじゃ犯人みたいに見えるよね。


私の半歩前を歩く二人の顔を見た。

私より高い目線、ふいに二人の視線が交わった気がした一呼吸あと、手が手首から離れて、私の手を絡め取った。


二人と手を繋ぐ。


いつ以来だろう、こんなふうに手を繋ぐのは。


小さい頃 弟の手を引いていた

私の手を引いてくれたのは…兄上……

私の手を引いて微笑む、在りし日の兄上が一瞬見えた気がした。


するりと二人から手を離す。


二人が立ち止まり、私を振り返る。


「あ、あの…どこで誰が見てるかわからないし、もし お二人の本命さんに見られたら、有らぬ誤解を招くかもしれませんよ」


もっともらしい言い訳だったと思うけど、二人は複雑な表情をした。

嘘がバレたのかと少し緊張する。


「お前……鈍感って言われたことないか」


なんだろう突然。

土方さんの質問を訝(いぶか)しく思いながら記憶を巡る。


どうだったかな、言われたような、言われなかったような。


「覚えてないです。
覚えてないってことは言われたことがないからだと思います。

あっ、でも、土方さんが言ったのと同じようなことは何回か言われました」


お前、鈍感って言われないか?って。

だから言われたことのない私は、言われないですって答えていたのを思い出した。


少しの思案顔を見せ、土方さんが口を開く。


「参考に聞かせてくれ、
仮にお前を慕う奴がいたとして、告白されたらどうする」


唐突に恋愛相談された、まあ恋愛話になるきっかけを作ったのは私だけど。


告白かぁ……


「私なら……困ります」


そうとしか言いようがない。

 
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