□冥姫 第五十一話
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今日はお祭りだ。

かぶき町商店街主催の納涼祭。


土方さん、沖田さん、私でパトロールの一貫でお祭りに来ている。


空はすっかり暗くなり、家族連れやカップルや友達連れなどで賑わう

そんななか、屋台を横目に辺りに気を配りながら歩く。


「人間なんざ、蛾みたいなもんだな
祭りだろーが、花火だろーが灯りさえあれば集まってくる」


土方さんが辺りを見ながら言った。


「きっとそういうふうに出来てるんでしょうね」

「星を行き交う文明を手に入れても根本は羽虫と変わらねェな」

「そのおかげで獲物から虫網に入ってくるんだから、悪かねェでしょう

灯りを求めるのは蛾だけじゃねェ
頭にのこぎり持った犯罪者(くわがた)も集まってきますからね」


なんとなく高杉のことを思い出した。


「大物が捕まるといいですね」


高杉と出会ったのも夏祭りだった。


そんな話をしながら歩いていると
前を歩くカップルが男性にぶつかり、いちゃもんを付けだす。


でもいちゃもんは直ぐに止まる、
男性が刀を突き付けたからだ。


さっそく掛かった。


沖田さんの刀の柄に伸びた手が止まる。


「今すぐ彼女と離れなさい
でないと逮捕しちゃうぞ」


突き付けた刀の持ち主は、尋常でない形相をした近藤さんだった。


「………」
「………」
「………」


周りは悲鳴で賑やかだが、三人揃って無言になった。


取り敢えず近藤さんが血迷ったことをしないよう、あとを付いて行くものの
見る人によっては、すでに血迷っているように見えると思う。


「おい、何があった」

「私は知らないです」

「浴衣デート、ダメだったらしいですよ」


「で、やっかみからバカップル取り締まりか」

「バカップル取り締まりしてる人を初めて見ました」


それが近藤さんになるとは夢にも思わなかった。


「青少年の非行防止くらいにはなるでしょ」

「さすがに真選組の評判に関わってくる、
今以上に評判を落とすのはまずいな……
宮中、止めてこいよ」


「近藤さん」

「…美月ちゃん!?
聞いてよ、お妙さんをデートに誘ったのに断られた!」

「何て言って誘ったんですか」

「浴衣を見せながらペチャパイでも似合うって言ったら、薙刀で答えが返ってきた」


えー……。


「なんでそんなこと言ったんですか、会社なら間違いなくセクハラですよ」

「軽いジョークじゃん!面白い男がモテるって雑誌に書いてたから言ったのに」

「男性で、それを言っても許されるのは、軽口を言ってくる幼なじみとか親しい友人、もしくは……好きな人ですよ」

「そんなこと一言も書いてなかった!
こうなったらカップルを片っ端から――」


また形相が険しくなった。

 
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