□冥姫 第五十話
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攘夷浪士にも色々いる、

過激派と穏健派があるように。


人の命を刀で奪った者は人斬りと呼ばれるようになり

その数が多いほど人斬りとして有名になる。



少し前から人斬り千兵衛と呼ばれる攘夷浪士が界隈を賑わせている。


今日あがった15人目の被害者を、真選組内にある解剖室で近藤さんと土方さんと確認した。


被害者である素性不明の攘夷浪士の傷を軽く検分。


「よくここまで死体を壊せるな、
…奴の仕業か」

「だろうな、人間が斬ったとは思えない大きさの斬り傷、
鍔元(つばもと)からちぎりとったような被害者の物と思わしき刀、今までの被害者と全て一致している、

奴の、人斬り千兵衛の仕業に違いねェ」


私が確認に参加させてもらった目的は、この刀

噂で聞いた通り、ちぎり取ったような刀。


「ちぎり取られた刀身は見つかってないんですよね」


被害者の刀を手に取りながら土方さんに問い掛けた。


「影も形もなかったそうだ」


刀は玉鋼から作られる、
折れた、なら分かるけど
ちぎれるとは考えられない。


でも、妖刀や呪い刀の仕業なら考えられる。


母上が言っていた、
人の恐ろしい程の怨念があるかぎり、新たな呪い刀や妖刀は生まれてくる、と。


「幕府に向けられていた切っ先を攘夷浪士に向け、血に染めているとか
仲間からも追われる身らしい」


言って手を差し出した土方さんに刀を渡す。


「それより気になるのが今までと同じように破壊された刀だ、
これをやったのが千兵衛なら
何の意味があるのか」

「千兵衛が仲間を標的にしだしたのっていつ頃ですか」

「それは定かじゃねェが噂は聞いたことがある
組織を離反する前に真っ黒な刀を手に入れてたらしい」

「刀?」

「黒い刀……黒漆太刀(くろうるしのたち)でしょうか」

「さぁな、ただ漆塗ったようには見えなかったらしいぜ。

刀を手に入れてからは異様に刀に執着するようになり
刀に話し掛ける姿も度々(たびたび)目撃されるようになったらしい」


土方さんの話を聞いて考えている間に話は推測に変わる。


「つまり、野郎の目的は人ではなく刀だと?」

「以前なら信じられなかったが、俺も刀には苦労させられたからな」


連鎖的にトッシーを思い出した。


「刀といえば、総悟も新しい刀にしてからよっぽど気に入ってるのか話し掛けてるらしいぜ」


近藤さんは言った、確かに言った

沖田さんが刀に話し掛ける、と。


沖田さんが?刀に?話し掛ける?


ちょっと想像できない。

 
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