□冥姫 第四十九話
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「頼むトシ!」

「尾美一の通信機能に細工した、
使い方しだいで奴らの居場所が割り出せるはずだ

それまででいい、待ってくれ!」


近藤さんと坂田さんを見比べたあと土方さんはため息を吐いた。


「……わかった、待ってやる
ただし割り出しのための時間は稼げよ」

「恩に着る!」


立ち上がり去ろうとする坂田さんに駆け寄りハンカチを差し出した。


「額に砂を付けたままだと目立ちますよ」


汚れた額は土下座を彷彿とさせる。


「そうだな、ハンカチ洗って返すから」

「はい」


去っていく坂田さんの背中を見送った。





夜になり私達は新八君の道場にいた
柳生の人達も坂田さんに頼まれたのか同様に来ている。


名目は尾美一の居場所の聞き取り

真実は警察の牽制と新八君たちの保護。

これも坂田さんに頼まれたのだ。


この状況に納得してない神楽ちゃんが「どけ」と言う、
だけど一番納得してなくて不服に思っているのは新八君だった。


一兄を消したいのか、
あの人が一体何をした、
裁かれるべきは別にいる、
恋敵を消せる大義名分ができた、
最低だ。


そう言った。


「テメーの大将に比べりゃマシだ」

「大将…?…銀さんが?
何があったんですか」


土方さんが答える前に沖田さんが口を開く。


「土方さん、どうやらお出ましのようで
五〜六十人ってとこですかね」


土方さんと東城さんは足止めのために向かう。


「総悟、宮中、あとは頼む」

「はい」


土方さんが行ったあと、くるりと新八君たちに向き直った。


「幸い、相手は門戸に集中しています
今のうちに行ってください」


探ってみたが気配はしない。


「グズグズしてねェで行け」

「いつこちらに人がくるか分かりません、早く行ってください」


少々疑いながら先陣をきったのは神楽ちゃん。

匍匐(ほふく)前進すれば通れる塀の石垣(いしがき)が崩れた場所から辺りを見回す。


「早くしろ、いいから行けっつってんだ」


沖田さんが石垣に蹴りを入れると残っていた石垣が崩れ、神楽ちゃんが下敷きになってしまった。


「沖田さん!なんてことするんですか!」


神楽ちゃんの上の石を取り除きながら言った。


「無事だからいいじゃねーか」

「そういう問題じゃありません!」


「どーいうことアルか
オビワンを捕まえにきたんじゃないアルか」

「残念なことにそれは近藤さんに止められててね。

俺達ゃ他の警察の牽制と、てめーらの保護をしにきたんでィ」


「な…なんで」

「頭下げて頼みにきたんだよ
旦那が」


口止めはされてなかった。


「驚いたぜ、旦那が俺達に頭下げるたァね
尾美一のことは俺が捕まえるから
手ェ出さずに待っててほしいって
あの軽い頭、地べたにこすりつけてたぜ」


事情を知らなかったのは三人の顔を見れば分かる。

 
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