□冥姫 第四十七話 前編
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「…どうしたトシ」

「いや…どうにも腑に落ちねェ」

「えっ!何が!?」

「何かあったんですか?」

「宮中、この厳戒体制の城内に容易(たやす)く侵入する方法は何が思いつく?」

「え?………そうですねぇ…、
手練(てだれ)の中でも一番の者を送り込む、
でもこの厳戒体制では無理でしょうね

それか一部の人間しか知らない秘密の抜け道を使う
でも抜け道があるかどうかも分からないし、秘密だから自力では容易にはいきませんね

あと
城内の者を取り込み、手引きしてもらう、取り込んだ相手の立場が上であるほど容易いと思います」


ざっと思いついたのはこれくらい。


「宮中が言ったように城中に侵入なんざ、中から手引きなしには不可能だ

明らかにいる内通者の取り調べもロクにせず、上は明朝 下手人を処刑すると のたまうばかりで何かをもみ消そうとしてるようにしか思えねえ」


死人に口なしってとこかな。

内通者が上であればあるほど保身のため、もみ消そうとするだろうし、もみ消しもしやすいだろう。


歩きながら話しをしていた私たちが向かっていたのは牢屋

捕まっている下手人を見にきたのだ。


牢屋は蔵のように独立した建物だった。

扉の前には二人の見張りが立っている。

見張りの人達に扉を開けてもらい一番最初に見えたのは扉の直線上にある牢獄。


「あっ、近藤くん!土方くん!美月ちゃん!」


牢獄の中でにこやかな笑顔で片手をあげている人物は坂田さんだった

新八君、神楽ちゃん、百華の月詠さん、見廻組の信女さんたちも坂田さんと同じ牢に入れられている。


「坂田さん!?」

「………」

「………」


近藤さんと土方さんは無言だ。


「こんなところで会えるなんて奇遇だね!

ちょっと話があるんだけど聞いてくれるよね!」


坂田さんが置かれた立場、今 居る場所から話したい内容が透けて見える。


動こうとしない二人を尻目に駆けていこうとした私の手首を土方さんが掴み、目の前で扉が閉められた。


殺すぞ、とか 無視するな、という怒号が扉の中から聞こえてくる。


「私、話だけでも聞いてきます」

「関わらんほうが身のためだ」


近藤さんが真顔で忠告してきたけど事情を知りたい。


「中で待機してる総悟が何か聞いてくるはずだ
戻ってくるまで待て」


私の手首を掴んだまま土方さんが言った
目を見るかぎり、従わなければ放してくれそうにない。


「…はい」


やっと手首の戒めが外れた。



沖田さんが牢獄から出てきたのは夕日がすっかり沈み、明かりが月に変わった頃だった。


沖田さんの口から衝撃の事実が語られた。

 
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