「…それなら構わねェが
実際 中2の恋愛してる奴等がいるからな」
「トシ、男は惚れたとき中2に戻るのさ
バカなことで一喜一憂したりな、
それまで培った知識も役に立たねェ」
「いきなり肩 持ち出したよ。
宮中が言ったみたいに想いを胸に秘めてるだけなら言わないが、
はっきり言う
これ以上ストーカーを排出するわけにはいかねェ
禁止令が出せないならあんたがなんとかしてくれ」
「俺に恋路を邪魔しろってのか
馬に蹴られるどころか絶対ザキしてくるって!
黒魔術とかしてくるって!」
場を去る土方さんを必死に止めながら近藤さんもドタバタ去っていった。
山崎さんの報告書を再度見る。
…黒魔術ならありえそう。
ん?
今 襖の隙間に人がいた。
後ろ半分の二分の一しか見えなかったけど
あの髪色は沖田さんだ。
聞いてたのかな?
その日の夕方、山崎さんに声をかけられた。
「美月ちゃん」
とても真剣で決意さえ伺(うかが)える目をしている。
「はい」
「ちょっと両手をだしてくれる」
「?両手ですか」
「うん」
いつもならまず理由を聞くが、目に気押されたせいか理由を聞く言葉は出てこなかった。
行動の意味が分からず疑問を抱えながら両手を差し出す。
山崎さんが私の両手を一まとめにして両手でギュッと握る。
「?あの───」
「美月ちゃんとの思い出が大切な思い出であることに変わりはないから」
「はあ」
「今までありがとう」
「はい?」
「でも美月ちゃんのことも好きだよ。
俺は美月ちゃんの幸せを祈ってる」
それだけ言って山崎さんは手を放した。
私の疑問などお構いなしに背を向けて歩いていく。
山崎さんって明日から戦地に行く予定でもあるのかな。
そういう感じの台詞に ちょっと本気で心配になった。
−−−
後日、山崎さんはたまさんとお見合いすることになった。
沖田さんが橋渡しして実現したそうだ。
なんだかんだ言っても山崎さんのことを気にかけてるのだろう。
「聞きましたよ、山崎さんの橋渡ししたの沖田さんなんですね」
「ザキが思い悩んでんのをみてらんなくてねィ
おせっかいを焼いちまった」
同じおせっかいでも私のありがた迷惑とは大違い。
「優しいですね」
微笑みながら言うと沖田さんは少し照れたみたいにそっぽを向いた。
ただあとで偶然会った山崎さんに橋渡しのことを言ったら引きつり笑いをされた。
山崎さんの様子から察するに沖田さんが言ってた話には真実とは違うものが混じっていたようだ。