□冥姫 第四十六話
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山崎さんは監察だ。


情報収集、潜入捜査、張り込みなどが主な役割。





「美月ちゃん」


廊下を歩いていたら声を掛けられたので立ち止まって振り返る。


「山崎さん、これからお仕事ですか」


私服姿の山崎さんが居た。


「そうなんだよ」

「頑張ってくださいね」

「…うん、じゃあ…」


去っていく山崎さんはあまり元気に見えなかった。



‐‐‐



今日で一週間 屯所の内外で山崎さんを見かけない。

たぶん張り込みをしているのだろう。


食事は……また毎食牛乳とアンパンを食べてるんだろうな。


以前 張り込み先に行ったときみたいになってるかもしれない。


でもそれは山崎さんの張り込みのときの供物だから私にはどうすることもできない。


そんなことを考えながら屯所の廊下の角を曲がったところで土方さんと会った。


顔を見ても目が合っても


「どうかしたか」


声を聞いても何もない。


やっぱりあれはホットフラッシュだったんだ。


「いいえ、何でもありません」


言って道を譲る。


譲ったのに土方さんは横にずれた私を見ている。

不思議に思って土方さんをみると眼が合った。


「なんですか」

「いや………」


それだけ言ってまだ私を見る。

なんとなく無言で見つめ合い、それが普通だと感じるような空気に包まれていた。


「なに見つめ合ってんだ?」


通りかかったらしい近藤さんが疑問を浮かべた表情で私たちを見ている。


その瞬間 私達を包んでいた空気は四散した。

まるで弾けず消えた泡のような脆さ。

………なんで私はこんなことを思ったの?


「なんか……お前…変わった?」



私の疑問など知るよしもない土方さんからの疑問。

髪を切ったわけでもないし、一日で数センチ髪が伸びるわけでもないし

……まさか!


「私 ふ、太りましたか」


最近 体重計に乗ってない。


「俺には太ったように見えんがなァ」

「太ったとかじゃねェんだ」


三人で土方さんの疑問を考えあぐねる。


自分自身 変わったと思い当たることはない。


「土方さんの気のせいじゃないですか」


私の結論を聞いても土方さんは納得してない顔をしている。


「トシだけが気づいたというのも考えられる、
そうだったとしても理由を説明できるようにならんとな」


近藤さんが豪快な笑顔で言った。

なぜ急に笑顔?


土方さんは一瞬バツの悪そうな顔になったかと思うと不敵っぽい笑みを浮かべる。


「ああ、いつか説明してやるよ」


今の土方さんの言葉は近藤さんに向けられたモノだ、
でも私も聞いている

当事者の意見としては、
原因究明するほどのことではないと思う、というのが正直なところ。

だから言った。


「そんなに深く考える必要も気にする必要もないですよ」

 
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